第十五話 変わる為にその十
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「そうして逃げるべきなのよ」
「ただ逃げるだけじゃないんだね」
「そうなの、麻薬やお酒は駄目よ」
「どっちも」
「ふてくされて諦めても」
それでもというのだ。
「その二つは駄目なのよ」
「自分が壊れるから」
「逃げるのは壊れたくないからでしょ」
「うん」
優子の今の問いにだ、優花は真面目な顔で答えた。
「やっぱりね」
「人として壊れたらね」
それこそとだ、優子も言う。
「どうしようもないから」
「どうしようもないの」
「そう、だからね」
「逃げることも大事なのね」
「そうした時もあるし逃げ方もあるの」
「そうなのね」
「間違っても薬やお酒に逃げたら駄目だけれどね」
「逃げ方が大事なんだね」
優花はこのことも知った。
「それで今の僕は」
「逃げていないわ、逃げても仕方ないことだし」
「身体が女の子になることは」
「そう、そのことはね」
「逃げてもどうにもならないし」
「向かうしか。受け入れるしかないことで」
「逃げるとすれば」
優花はここで暗い顔になった、そうして言うのだった。
「それこそだよね」
「自殺しかないわね」
「自殺、だね」
「これは逃げるにしてもね」
「一番駄目だよね」
「死んでどうなるか」
優子も苦い顔で言う。
「そういうことよね」
「そうだね、自殺しても」
「それは何にもならないわ」
逃げ方のうちでもというのだ。
「一番しては駄目なことよ」
「そうだよね」
「それだけはしては駄目よ」
「うん、残った人が悲しくなるだけだね」
「実際にそうよ、姉さんもね」
優子は自分の経験からも話した。
「友達が自殺したことがあるけれど」
「そうしたことがあったんだ」
「これはね」
それこそとだ、また言った優子だった。
「残ったご家族も嫌になって」
「友達、他の周りの人も」
「そう、悲しい気持ちになるから」
「人を悲しませたら駄目だから」
「絶対にしてはいけないことよ」
こう優花に話すのだった。
「何があってもね」
「そうだよね、自殺はね」
「それだけはしては駄目よ」
「薬やお酒に逃げる以上に」
「その逃げ方も自殺に近いけれどね」
薬物中毒やアルコール中毒で死ぬ者も多い、特に覚醒剤は身体も心も恐ろしいまでに蝕んでいく。果てには廃人になってしまうのだ。
「自殺はね」
「してはいけないね」
「それだけはしないでね」
「うん、僕も自殺はね」
沈痛な顔でだ、優花も答える。
「しないよ」
「そうしてね」
「絶対にね、あと僕が身を隠すことは」
「安全を計ることよ」
「そういうことだね」
「わざわざ周囲の好奇の目に自分を晒してもね」
そういうことになることをだ、優子は認識していた。それで言うのだ。
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