第十五話 変わる為にその七
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「そこまでは」
「そうだよね」
「指輪だけじゃないんだな」
「トリスタンとイゾルデとかパルジファルも四時間あるし」
「そっちも四時間か」
「どっちもね」
「そうなんだな」
龍馬は唸る様に言葉を返した。
「ワーグナーはおいそれとは聴けないか」
「ちょっと以上にね」
「けれどプッチーニはか」
「ワーグナーよりずっと入りやすいから、もっともワーグナーは」
このワーグナーの作品についてだ、優花はさらに話した。
「オペラの中でも難易度とか最上級だろうかな」
「また別格か」
「人気があるからよく上演されるけれどね、作品が」
「それでも難しいんだな」
「うん、そうした音楽なんだ」
「長くて難しいか」
「そうなんだ、まあとにかく龍馬がプッチーニを聴くのなら」
またワーグナーからプッチーニに話を戻した。
「色々聴いてね」
「二時間かけてか」
「一作ごとにね、そうしてね」
「わかった、じゃあ聴いて御前とこのことでも話すな」
「楽しみにしてるよ」
「長崎に行っても大学に行ってもな」
どっちでもとだ、龍馬は明るく笑って優花に言った。
「プッチーニのことも話そうな」
「そうしようね」
二人で話した、そうしたことを話してだった。
二人は昼休みが終わると自分達のクラスに戻った、そして午後の学園生活も楽しんだ。そうした幸せの中で。
優花は家に帰ると姉の優子にだ、この日はこう言われた。
「今院長先生とお話をしてね」
「僕の編入のことをだね」
「そして隠れることもね」
女の子になるまでだ。
「進めてるから」
「それじゃあもう少ししたら」
「見たらね」
優子のその目で見てもだ。
「優花そろそろ女の子になってきているから」
「姉さんから見ても」
「そう、だからね」
「もう少ししたら」
「本当に長崎に行くことになるわ」
「そうなんだね、長崎で」
「女の子になるまで身を潜めて」
そうしてというのだ。
「それからね」
「長崎でだね」
「卒業までいてもらうから」
「あっちの高校に通うのよね」
「女の子になってからね」
「それじゃあ」
その話を聞いてだ、優花は考える顔で言った。
「長崎では寮に入るの?僕」
「ああ、向こうの学校の」
「そうなるのかな」
「そっちの学校には寮がないから」
「そうなの」
「アパートで暮らすことになるわ」
「アパートで一人暮らしをして」
優花は自分から言った。
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