ムーンライト・オキナワ
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統計によって実態より多く、またロシア人や中国人までが入り込んだ人種豊かな下層階層の出現は、日本に新たな混乱をもたらしていたのである。
高度経済成長から始まった国土改造計画は戦争終結によってその予算が振り分けられて、土地の高騰を引き起こしつつあった。
新しい国民である彼らを本土に自由に入れたら、未曾有の混乱が待っている。
かと言って、北日本復興から溢れて本土を目指す元北日本人を受け入れる場所は早急に必要だった。
その場所に選ばれたのが、今二人が車で走っている街。沖縄である。
沖縄の米軍が撤退して国後に基地機能が集約した結果、広大な米軍跡地は宇宙開発事業団が抑えて宇宙開発の拠点として整備されることになった。
だが、ベルリンの壁崩壊からドイツ再統一を横で見ていたこの国は、統一後の混乱に対処するために、出島みたいなものが必要であるという認識を持つようになる。
沖縄がそれに選ばれたのは、宇宙開発事業団による大規模再開発という需要があったのと、目前に迫っていた香港返還に伴う華僑の避難地として華僑資本が流れこんだからだ。
沖縄万博で展示されたアクアポリスの発展形である那覇メガフロートシティが宇宙開発事業団の手によって建設されると、国はその地を経済特区に指定。
統一戦争の余波で今だ戦火が続いている朝鮮半島の難民の収容地としてもこのメガフロートは注目され、東京や大阪、名古屋や福岡に同じようなメガフロートが姿を表わす様になる。
「誰が呼んだか知らないが、この街はこう呼ばれるのさ。
『方舟都市』ってね」
「『はこぶねとし』?
せいしょの?」
「お嬢さんはものしりだなぁ」
「おとうさんのしりあいにおしえてもらったの。
おとうさんは、はこぶねでやくそくのちにいくんだって」
少女の誇らしい言い方に泥棒は笑う。
少女が意味を分かっていないが、それが真実であると理解しているからだ。
何故ならば、少女の父親は明日宇宙往還機のパイロットとして、宇宙に旅立つことになるのだから。
月影に浮かぶ多層構造物一つに数万の人間が居住している。
雑多なスラムの出現だが、特区であるがゆえに意図的に中央の介入を避けられ、そこで行われる安価な生産品は世界中の国々に『MADE IN JAPAN』をばらまいていった。
「どろぼうさんは、なんであそこにいたの?」
少女の質問に泥棒は笑う。
楽しそうに、懐かしそうに。
「その約束の地に知り合いが居てね。
花束でも贈ろうと思ったのさ」
知り合いの名前はマモー。
ロケットで不死の世界を目指した巨大な脳みそに成り果てた化物は、ルバンによって死しても今だ地球の近くを漂っていた。
クローン技術の進歩は、細胞の複製からDNA配列の複製
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