第16夜 断末
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あるのだ。必死で抑えこんだ「普通」の人間としての心が箱の中で大暴れし、蓋をこじ開けようとする。暴れる原因は今更言うまでもない――自己の消失という絶対的なまでの「恐怖」。
死と言う存在を日常に近づけないために人間が抱く「恐怖」を、何故この場で自分しか抱いていない。
急に、背後からの視線が強くなった気がして、トレックは後ろを向いた。
そこには、今までも全く変わらない態度で剣に手をかけたまま歩くギルティーネがいた。
「…………………」
陰影のせいだろう。彼女の顔は、何故か「次の得物はどこだ」と問いかけているようだった。
何の根拠もない妄想だ。しかし、その妄想がトレックの心にまとわりついて離れない。
この場で人間らしい感情を抱いているのは、トレック・レトリック唯一人。
ならば、他の『欠落』を抱えた4人は。彼らはまるで、人間ではないかのようではないか。
(俺は狼の群れに混じった羊………周囲とは、そもそもまるで違う生き物――)
トレックは頭を振って、思考を無理やり頭から追い出した。
今は、生き延びて、ギルティーネと共に試験をクリアすることだけを考ればいい。余計なものは全てオオカミの毛皮の奥に仕舞い込んで、精一杯に狼のふりを続けろ。生き残ることが出来れば、周囲が何だろうと構わないのだから。
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