第16夜 断末
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………!!う、うわぁぁぁあああああああああああーーーーーーッ!!!』
断末魔と、銃声が一発、二発、三発――直後、音がピタリと止んだ。
気が付けばカンテラの灯は途切れており、遅れてカラリと乾いた金属音が響く。
闇に包まれた世界で起きた一瞬の物音は、その後の耳が痛いほどの静寂によって包み込まれた。
「………今の、は?」
喉が干上がるのを感じながら、トレックは自分の予想が外れであってほしいと思った。
しかし、この状況とあの音で導き出される結論など、残酷なもの以外はあり得ない。
それは、嘗てないほどに近く感じる死神の足音。
声に出すことで想像が現実になってしまうことを怖れたトレックに代わるように、ドレッドが口を開いた。
「試験を受けた学徒の悲鳴だろう。だが、途中で声が途切れたとなると……」
「死んだのだろう。敵に殺されて。どちらにしろ進めばわかる事……そうですね、ドレッド様?」
「――全員、気を引き締めろ。我々と同じく帰路についていた戦士の悲鳴ともあらば、もしやこの先には更なる上位種がいるのかもしれん」
ドレッドは険しい顔で拳銃を握りしめ、ガルドは無言で縄をいつでも投擲できるよう腕に引っかける。ステディは今の悲鳴をそよ風か何かだと思っているかのように自然体で前へ進む。この先にあるであろう現実を前に、淡々と。
(おい、嘘だろお前ら……この状況で抱く感想が、それだけか?それっぽっちで終わりなのか……?し……死んでるかもしれないんだぞ、人間が。俺達と同じ、人間が――!)
正気か、とトレックは叫びかけた。
これまで上手くいっていた道中での、突然の『死』というワードが背筋を冷たくなぞる。
この試験は毎年死者を出す。それは知識として知っている。しかし、自分はその死者にならないように頑張っていて、事実上位種にも対応できた。だからこの先に相手を殺した敵がいても安心だ――などと楽観的な考えはトレックには浮かばない。むしろ、それとは違ったベクトルの感情が湧きあがる。
痛烈な違和感と、自分と相手を隔てる恐ろしいまでの温度差。
彼らの言葉に乗った「死」の重量が、余りにも軽い。
死者のむごたらしい骸があるかもしれない場所に、どうして近づきたいと思うか。
つい昨日まで同じクラスにいたかもしれない人間の死を知り、平気でいられるか。
今までに自分の周囲で見えなかった『結果』が具現化して現れようというときに――何故そうまで淡々と自分には関係がないとでも言いたげな顔が出来るのか。
死人など、人生で一度二度、棺桶の中で眠っているのを拝んだことしかない。
しかし、これから待ち受けているかもしれないものは、自分がもしかしたら到るかもしれない最悪の結末の一つとしてそこに
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