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忘れ形見の孫娘たち
7.父は鼻の下を伸ばし、母は乙女に戻る
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「爺様の遺品を整理してたらこんなのが出てきた」

 仕事が休みだった父ちゃんは今日、朝から爺様の遺品整理をしていたのだが……その父ちゃんが昼過ぎに居間にやってきて、僕に一枚の写真を見せた。

「ほぁ〜……これは……」
「爺様、若いな〜……」

 父ちゃんが爺様の遺品の中から見つけたのは、恐らく若かりし頃の爺様が写った写真だ。白黒で年代物のためかだいぶ傷んではいるが、被写体の二人の顔付きは分かる。

「これだけ若くて古い写真でも、爺様って分かるね……」
「ほんっと親父のオーラは昔っから変わらんな」
「ホントだね〜……」

 ちなみにこの時、母ちゃんは台所で晩御飯の準備をしていた。前回の加賀さんと瑞鶴さんの襲撃を経験し、『あの子たちが来るときは晩御飯たくさん準備しなきゃ!!』と思ったらしい。

 そして、写真にはもう一人女性が写っている。美人でキッとした顔立ちで気が強そうな、なんとなく爺様と悪友っぽい雰囲気が漂っている女性だ。爺様によく似たエネルギッシュなニカッとした笑みをしていて、この写真がカラーだったら白い歯が眩しく輝いていたことだろう。

「これ誰だ?」
「分からん……ひょっとしてこの写真を撮った時の爺様の恋人とかかな?」

 写真の裏を見た。裏にはこの写真の被写体と思われる人の名前が書いてあった。

――彦左衛門・まや 自宅前

「おふくろ?!」
「ぇえ?!」

 父ちゃんが素っ頓狂な声を上げ、僕も釣られて変な声を上げてしまう。僕も裏に書かれてある名前を見たが、確かに『まや』と書いてある……これは、婆様の名前だ……。

「マジで?! これが婆様……?!」

 僕が知っている婆様の姿は、和室に飾ってある遺影にあるような、女性らしい柔らかさをたたえたとてもかわいらしい姿だ。話し方や性格も、とても女性らしい、柔らかくて優しい婆様だった。そんな婆様の姿と、ここに写っている男勝りでキッとした顔立ちの女の子の姿がどうしても重ならない。

「これウソなんじゃないの?」
「いや……どうだろう……」
「ふぃ〜……下準備完了〜……どうしたの?」

 晩御飯の下準備を終えた母ちゃんが台所から麦茶片手にやってきた。母ちゃんは僕達が困惑して見ている写真をチラッと一目見るなり……

「ぁあ、爺様と婆様の若い頃の写真? 二人とも若いわね〜」

 とさらっと言い当てた。

「母ちゃん分かるの?!」
「お前、この女の子が誰か名前を見なくても分かるのか?!」
「分かるも何もそっくりじゃない。婆様が若い頃ってきっとこんな感じだったんだろうなーって想像した通り」
「マジで?!」

 写真を見ながらテーブルでのんびりと麦茶を飲む母ちゃんの横で、僕と父ちゃんはただひたすら女性の洞察力の凄まじさに脱帽して
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