7.父は鼻の下を伸ばし、母は乙女に戻る
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のですから、私がお出迎えします」
妙高さんはそう言うと、しずしずと玄関に向かっていく。その後『お父様、おかえりなさいませ!』『妙高さん! ムッはァァあああ妙高さんっ! 日本酒を買ってきましたぁあ!』という声が聞こえる。だんだん頭が痛くなってきた……
「それはそうとかずゆきー」
「んー?」
「この写真なに?」
そういえばテーブルの上にはまた、若かりし頃の爺様とイマイチ信じられない婆様が写った白黒写真がまだ放置されていた。鈴谷の目にそれが止まったようだ。
「ぁあこれ? 今日見つけた爺様の遺品。若いころの爺様と婆様が写ってるんだよ」
「ふーん……」
鈴谷は写真に手を伸ばし、それを手に取って眺めていた。……と思ったら。
「え……?」
ん? どうかしたか? 珍しく驚いてやがる。
「これ……」
「ん?」
「どうかしたか?」
今まで母ちゃんの妙な雰囲気に気を取られていたようだった那智さんが、鈴谷の様子に気がついた。
「那智さん……これ……」
「ん?」
鈴谷はそう言いながら那智さんに写真を渡し、那智さんもその写真を見るなり驚いた顔をしていた。
「……摩耶か?」
「でしょ? 摩耶さんだよね?」
ちょっとまってどういうこと? なんで二人が婆様の名前知ってるの?
「二人ともうちの婆様知って……」
「いやー妙高さんにお出迎えしていただけるだなんて思っても見ませんでしたわダハハハハハ!!」
「とんでもないです。私たちのためにこんなにたくさんお買い物していただいて……」
すごくタイミングよく父ちゃんと妙高さんが部屋に戻ってきた。父ちゃんはそのまま買ってきた山のようなお酒を上機嫌で台所に持っていき、妙高さんはそのままこちらに来て、二人の様子がおかしなことに気がついた。
「ふたりとも? どうかしたの?」
「ぁあ姉さん、この写真を」
「? 写真?」
那智さんが妙高さんに件の写真を手渡し、妙高さんも腰を下ろしながらその写真を見る。そして二人と同じく、写真を見るなり驚いた表情をしていた。
「摩耶……?」
「そうだよね? これ摩耶さんだよね?」
「確かにそうね……」
「ちょっと待って待って。なんでみんなうちの婆様のこと知ってるの?」
そうだよ。その写真を見て驚くだけならいざしらず、なんでそれをひと目みただけで『婆様』って分かるんだよ。これも女特有の直感力ってやつなの? それとも何か他に理由があるの?
「ねぇかずゆき。この写真どうしたの?」
「言ったじゃん。爺様の遺品整理してた父ちゃんが爺様の遺品の中から見つけたんだよ。若いころの爺様と婆様の写真だよ」
「じゃあこの人、かずゆきのおばあちゃん?」
「そうだよ? 裏に“彦左衛門 ま
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