7.父は鼻の下を伸ばし、母は乙女に戻る
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いよ!」
「いいからつべこべ言わず買ってくるのよ! 那智さまのためにッ!!!」
夫婦揃って何やってるんだよ……しかもお互いが人生のパートナーだというのに、そっちのけで妙高さんだの那智さまだの……
「そお? 仲良くていいご夫婦じゃん?」
「仲はいいな……別の意味で……」
「鈴谷ちゃん! 妙高さんの好きなお酒は?! あの方がお好きな酒は何なのだ?!」
「さ、さぁ〜……でもこの前日本酒飲んでたけど……」
「よし! じゃあ父ちゃん行ってくるッ!!」
「オールド! オールド忘れないようにね!!」
うーん……息は合ってるんだけど、すんごく複雑な気分……
鼻の下を通常時の20倍ぐらいに伸ばした父ちゃんが大急ぎで近所の酒屋に買い物に行って10分ほど経過した時、和室から妙高さんと那智さんが出てきた。二人とも多少目は赤かったが、来た時と変わらずとても落ち着いた様子だった。
「ぁあ、二人ともおかえりー」
なんでお前がおかえりなんて言うんだ鈴谷……
「爺様とのお別れは済みましたか?」
「ええ。おかげさまでしっかりとお別れを言うことが出来ました」
「ご家族の方と鈴谷には感謝している。本当にありがとう」
「そんなッ! 那智さまの麗しきお口からそのようなもったいないお言葉をいただけるだなんて……!」
母ちゃんのオトメモード、再起動。
「む……ところで和之。お父上は?」
「お二人のために買い出しに出てます。サントリーオールドと日本酒を買ってくるそうですよ」
平静を装っている那智さんのほっぺたが若干赤くなり、サイドテールが少し揺れた。本人は隠しているみたいだけど、けっこううれしいみたいだ。
「……でも本当によろしいんですか?」
妙高さんが申し訳無さそうにそう聞いてくるが……
「いいんですよ! むしろどうぞ食べていってくださいまし那智さま!」
「ありがたい。では飲ませていただこう」
「よかった! それでは私は晩ごはんの準備を続けますね那智さま!」
「よろしくお願いする」
「……ああッ!」
母ちゃんは目の中にハートマークをこさえたまま台所に消えていき、鼻歌混じりに野菜をトントンと切り始めた。なんか逆に申し訳ありません……無理に付き合っていただいて……。
「鈴谷も付き合ったげるよ!」
「お前は別にいいんだぞ鈴谷?」
「ひどっ」
「ただいま! 妙高さんただいま戻りました!!」
玄関から父ちゃんの元気な声が聞こえてきた。帰ってきて開口一番『妙高さんただいま!!』って、あんたどれだけ妙高さんにやられっぱなしなんだ父ちゃん……ほら反射的に妙高さん立ち上がっちゃってるじゃないか……
「妙高さん、気にしなくていいですよ……」
「いえせっかく呼んでいただいた
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