7.父は鼻の下を伸ばし、母は乙女に戻る
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「ん?」
「恋愛って、いくつになっても出来るものなのだろうか……」
「さぁ……?」
この状況は僕も困惑しているし、鈴谷自身も戸惑っているようで、苦笑いする鈴谷の額に冷や汗が垂れていることを、僕は見逃さなかった。
「二人とも! 気を確かにッ!!」
なんとか二人を正気に戻したくて、僕は手をパシンと叩く。父ちゃんはハッとして鼻の下が縮み、母ちゃんの目が途端に乾いた。ドライアイじゃないぞ?
「二人ともしっかりしてくれよ! 妙高さんと那智さんの知り合いの鈴谷の前で妙な態度取らないで!」
「す、すまん二人共……」
「わ、私としたことが……鈴谷ちゃんごめんね……」
「いやいやー。まぁ実際那智さんカッコイイもんねー」
「鈴谷ちゃんもそう思う?! ねぇそう思う?!」
珍しい光景だ……鈴谷があっけにとられてるぞ……。
「それはそうと母ちゃん。妙高さんと那智さん、晩御飯食べてくってさ。だからちゃんと準備お願いね」
「なにッ?! 妙高さんがうちで晩御飯を食べていくだとッ?!」
えらく男前なボイスでそう叫ぶ父ちゃんだが、その鼻の下は再び通常時の15倍ほどに伸びていた。父親のそういう姿って見たくなかったなぁー……。
「……何考えてるんだとうちゃん」
「あ、いや……おほん。別に何も考えてない」
「那智さまが私の料理を……私の料理を那智さまが……お口に合うかしら……何が好みなのかしら……お酒は何が……ドキドキ」
「かあちゃんもいい加減恋するオトメモードから再起動してくれないか?」
「いや、だって那智さまが……」
「那智さんはけっこうお酒が好きだよ。ウイスキーとか好きだったんじゃないかな?」
「大変! うちビールしかないッ!!」
あ、母ちゃんが我に返った……いや、別の方向にブーストがかかったとでも言おうか……。
「あなた!」
「ぐへへへへ……妙高さん……あのうなじ……いろっぽくて……」
「あなたッ!!」
かあちゃんの隣で鼻の下を通常時の20倍ぐらいまで伸ばし下衆な笑いを口から漏らしている父ちゃんの頭を、母ちゃんは思いっきりひっぱたいていた。昔のコント番組であったような『スパーン!!』というものすごく気持ち良い音が響いていた。
「あだッ?! な、何をするッ?!」
「鈴谷ちゃん、那智さまってどんな銘柄のウイスキーが好みか知ってる?!」
「あ、えーとよくわかんないけど……確かダルマとか言ってたかな……」
「ダルマね?! あなたッ! そのダルマとやらを買ってきてッ!!」
「そんなウイスキーないだろうが! ……あ、いや待て。あれか。サントリーオールドか。親父がそんなこと言ってたな……」
「それでいいから買ってくるのよ! 一番いいやつ高いやつ!!」
「オールドにいいやつもクソもな
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