7.父は鼻の下を伸ばし、母は乙女に戻る
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会話?!
「いやいや……僕なんてまだまだですよ……」
僕のこの返事もなんかけったいな返事だけど、うまく頭が回らないんだよ……だって生まれてこの方『いい面構え』だなんて言われたことないしさ……。
「私は、あなたを一目見て和之さんだとわかりましたよ。雰囲気がひこざえもん提督にそっくりで」
と妙高さんも僕にこう語りかけてきた。それも初めて言われた。なんかこう、こっちの予想外のことを行ってくる二人だな……会話のペースが握れない。
「鈴谷から話は聞いています。いつも鈴谷がお世話になってるみたいですね。昨日は焼き肉をいただいたとか」
「今日も母が晩御飯を準備しているようです。よかったらお二人も食べていってください」
「分かった。ありがたく頂戴しよう」
「今晩は何食べさせてくれるの? かずゆきー?」
「メニューが何かは分からんが、鈴谷の分だけは僕が作ったかつお節ご飯だ」
「ひどっ」
「もうお二人はすっかり仲良しみたいですね」
「だな」
「勘弁してください……」
「ニヤニヤ。ねーかずゆきー?」
「さて……」
そうこうしているうちに、和室の前に到着する。
「ここが爺様の和室です」
妙高さんと那智さんの雰囲気が変わった。今までは柔らかくしっとりとしていた妙高さんの雰囲気が硬質になり、那智さんの目が鋭くなった。
「姉さん……」
「ええ。……和之さん、和室に入るのは私たちだけにしていただけませんか?」
もとよりそのつもりだ。鈴谷も僕の方を見てコクリとうなずいてくれる。僕らが妙高さんのお願いを聞かない理由はない。
「……わかりました。ではお二人が部屋に入ったら、そのまま襖を閉じます。好きなだけ、お別れをしてください」
「ありがとうございます」
「和之、感謝する」
二人の感謝の言葉を聞き、僕は襖を開いた。和室の中の爺様の遺影が二人を迎え入れる。
「……ひこざえもん提督」
妙高さんがフラフラと和室に入り、那智さんもそれに付き従うように和室に入っていった。……約束だ。僕は何も言わず襖を閉めた。
「そんな……そんな……提督……」
「姉さんっ……」
襖を閉じる寸前に見えたもの……それは、両手で口を抑えて泣き崩れる妙高さんと、その妙高さんの肩を必死に支えようとする那智さんの後ろ姿だった。
妙高さんと那智さんを和室に残し、僕と鈴谷は居間に戻る。居間に来ると……
「ああ……妙高さん……イイ……」
「那智さま……その凛々しいお姿……ああっ……」
と僕の両親は二人揃ってどこか別世界に旅立っているようだった。父ちゃんはいつもの10倍ぐらいに鼻の下が伸びており、母ちゃんの目は微妙に涙で潤んでいて、まさに恋するオトメ状態だった。
「鈴谷」
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