第15夜 宣告
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は当たらない程度には結果に貢献している。
それでもなおステディから嫌悪感や猜疑心の籠った視線がぶつけられるということは、「また」なのだな、と思う。
『普通』の人間のようで気味が悪い――。
何度も言われてきた言葉だ。トレックの知る普通の人間と言うのは、ふと大切な事を想い出して行動や言動が小さく変わることがある。誰かの言葉に栄養を受けて、それまで当然にしてきた行動を見直すこともある。また、最初は受け入れがたかったものも後に考え直して受け入れるよう努力したりもする。おかしいことではない、普通のことだ。
しかし『欠落』持ちには、このトレックとしては普通に起こりうると思っていることが、通常の出来事には映らない。トレックや普通の人間にはそれは理解できない感覚なのだが、彼等だけはその行動を「気味が悪い」と考える。
その理由を彼等も、普通の人も、言葉に表して説明するのは難しい。考え方の個人差もあるので、言語に表すと統一した意見に纏まらない。それでも、『欠落』持ちは誰しも共通してこの当たり前の変化を気味悪がり、避けたり拒絶意志を示す。
根拠を探るのは止めた。分かりっこないからだ。
だから、トレックはいつも一度だけ相手と会話して『確認』をする。
「俺のことが、気味が悪くてしょうがない。そんな顔をしてるよ、ステディさん」
「そんな顔、ではなく事実だ」
(……ここまでキッパリ言い切られるといっそ清々しいな。ま、『欠落』持ちの人はお世辞とか言わずにキッパリ言い切るパターンが多いし慣れてるけど)
最低でもこの任務が終わるまでは、盟約の通りに動いてもらわなければ困る。今更個人的な私情で連携を乱すとは思えないが、やはりはっきりさせておくべきだろう。
「先に行っておくけど、これはお願いとかそういうのじゃなくて、確認作業だ」
「確認だと?今更何を確認する?それとも盟約の内容も忘れる程貴様のおつむは――」
「少し黙れ」
ステディが、驚いた表情で言葉を止める。
この確認を取る時は、弱気は絶対に駄目だ。必ず自信満々で、多少なりとも威圧的にしなければ相手に軽んじられる。下手に出らず、あくまで自分と相手が対等であることを前提にしつつ、しかしはっきりと言わなければならない。
「気味が悪いなんてのは気分の問題だ。今までにもその気分とやらで俺を嫌う奴は山ほどいた。中には俺と行動しなければいけないことを理由に実技を断った奴もいるくらいだ。別の試験では俺のパートナーとして登録されておきながら、俺が受かると気分が悪くなって効率が悪いからと俺だけ蹴落とそうとした奴もいる。だから俺はキミみたいに所構わず無遠慮な視線を送る人には必ず同じことを言う」
本当に、酷い目に遭う時はとことんひどい目に遭う。だからその予防線のために色
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