第14夜 狡知
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『ル゛ロ゛ロロオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
大気を震わせる咆哮と纏わりつくような死の気配が、若き呪法師たちの全身を重圧と恐怖で雁字搦めにした。
これが上位種――大陸の民に『大地奪還』を諦めさせ、今なお呪獣を恐怖の対象たらしめる力。
呪力から湧き出る人知を超えた力の集積体が、血走った眼光が、その存在の全てが重苦しく圧し掛かる。
「ぬぅ……っ」
「くそ、駄目か……!?」
今までのちっぽけな呪獣があげる喧しいだけのそれとは違う、自らが支配者足らんとするかのような強烈な重圧が込められた叫びだ。呪獣こそが人間を狩るべき存在であり、大陸の民が狩られる存在であることを今一度思い知らせんとするかのような叫びに全員が怯み、一歩足を下げる。
そして、その致命的な隙を逃すほどに暴力の権化は甘くはない。瞬時に姿勢を低くした鎧の呪獣は、それまで以上の速度で瞬時に5人の元へと突進を繰り出した。体勢を崩し、一斉攻撃のために一カ所に集中したトレック達には、もはやその攻撃を避ける方法は残されていない。
となれば、彼等を待つのは『死』という絶対的な終焉のみ。
作戦が終わってしまう事を悟ったトレックは、諦めるように静かに目を閉じた。
そして、再度見開いた。
「――ステディさん、今だッ!!」
「私に命令……するなっ!!」
瞬間、ステディが地面に突きたてていた杖が淡い光を放ち――鎧の呪獣が今まさに踏み込もうとしていた足場が、突如として陥没した。
『ロ゛ロロオオオオ――ル゛ア゛ェッ!?!?』
突然の出来事と、鎧を着たままの加速エネルギーを殺しきれなかった呪獣はその陥没した足場に吸い込まれるように前足を突っ込み、完全にバランスを崩して地面に頭から突っ込んだ。それでも勢いが収まらない巨体は背中から見事に一回転し――その先の地面に『べちゃりと音を立てて大きくめり込んだ』。
「――お前が突進するしか能のない猪みたいな奴だってことは分かってたからな。だから、策を弄した」
『ア゛ア゛ッ!!ウ゛ォ………オ゛オオオッ!?』
呪獣はすぐさま起き上がろうと身を翻そうとするが、踏ん張る筈の足場に体を置いておけば置くほどにズブズブと体が地面に沈んでいく。そこに到って呪獣は漸く一つの事実に気付く。
――沼だ。硬い荒地だったこの場所の、自分が転倒した場所だけが沼になっている。
脱出しようともがけばもがくほど身体は沈み、激しく脱出しようにも鎧の重量と形状に動きを制限されて思うように動けず、まるで体勢を立て直せない。
「ステディさんはいい仕事をしたよ。お前の目を他のメンバーで引き付けつつ、こっそりこの地面の土だけを粘性の少なく脆い構造へ作り替えたんだ。見た目には普通の地面と変わらないから
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