第14夜 狡知
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を舞う。
「――成功だっ!!」
但しそれは跳ね飛ばされたのではなく、ギルティーネ自身が自分の脚力で宙を舞った結果。彼女はトレックの作戦を忠実に実行し、無傷に危なげなく地面に着地した。彼女の常人離れした胆力と身体能力がなければこの作戦は成功しなかっただろう。
ステディがどこか悔しげに声をあげる。
「器用なものだ……まさかすれ違いざまに一度で成功させるとはな。貴様はこの結果さえも予想の内か?」
「失敗すると思って作戦を託す馬鹿がどこにいるよ。彼女はやれと言われたらやる人だ」
二人の視線の先には――『鎧の呪獣』の前足部分に巻き付けられた、淡い橙の光源を放ち続ける灯縄があった。
縄の熱は大きなものではなく、しかも鎧に阻まれてダメージなどまるで通ってはいない。だが、あれはそもそも攻撃用に巻きつけた物ではない。あれは、暗闇に逃げ込んでも敵の位置を知る事の出来る『目印』だ。
これで位置や距離に悩まされる心配はなくなった。縄が付いている限り、あの敵がどこにいようと灯りが全て教えてくれる。あれこそが『勝機』と言う名の小さな灯となるのだ。
――正直に言うと結構不安だったけどね!!と内心で叫びつつ、疑われたくないので涼しげな顔で言い切る。こうやって自信満々な顔をしておいた方が説得力があるから、という恰好の付かない理由から出たが、作戦はもう一段階あるのだからこちらを快く思わないステディに変な隙は見せられない。
さて、ギルティーネ達があの呪獣の相手をしているうちに準備はもう整った――とトレックは内心で呟く。『地』の呪法に長けた彼女の術にトレックが手を加えたことで、最後の策に相手を嵌める準備は全て整っていた。
あの呪獣は強いが、行動そのものはワンパターンな突進しかない。
鎧を着こんだがために呪法は効きにくくなったが、代わりに人間用の鈍重な鎧は呪獣の俊敏性を著しく損なっている。厄介である筈の鎧を纏うという行為も、冷静に考えれば欠点はある。
それでも一芸に特化した力とはそれだけで強力なものだが――生憎、このチームならば対処は容易だ。
自分の鎧が発光している事に気付いた鎧の呪獣はもがくように身をよじったが、鎧のよって間接駆動域が制限されているために縄を引き離す事が出来ない。格好のチャンスに、ギルティーネとステディを除く3人の銃口が一斉に鎧の呪獣へ向かう。
「構え、撃ぇぇぇぇーーーッ!!」
トレックの号令と共に3人の拳銃から「炎の矢」と「撃鉄(インパクト・ヒエロ)」が一斉に発射され、呪獣の近くに次々に着弾する。着弾の度に炎が吹き上がり、呪獣の鎧の僅かな隙間から内側を蝕む。
大きなダメージではない。しかし、このじわじわいたぶるような攻撃に、鎧の呪獣が全身を震わせて憤怒の雄叫びをあげる。
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