百四 一騎当千
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ながら、ナルトは静かに眼を細める。
輪をかけて我が儘を言う紫苑を宥める足穂の顔に、濃い疲労の色を悟って、ナルトは不意に自分達が今来た道を視線で辿った。
遠方に望む鬼の国に、幽霊軍団の足止めを頼んだ再不斬達の気配を微かに感じ取る。
「わ、私はまだ平気じゃ!早く沼の国へ…っ」
「紫苑様、封印の術は体力に大きく左右されます。いざという時に力を発揮出来ねば、事はなりません」
淡々とした声で自分を宥める足穂を、紫苑は暫しじっと睨みつけていたが、やがて諦めたように顔をぷいっと逸らした。
「もう、寝る!」
寝入った紫苑を白と君麻呂の二人に護衛させ、ナルトは足穂の元へ向かった。
正直なところ、互いに対してやけに敵対心を抱いている二人の任せるには少々不安だったが、これも任務の内だ。白と君麻呂も理解しているだろう。
不寝番についている足穂に、ナルトは朗らかな笑みで「体力がもちませんよ」と携帯食を手渡した。「かたじけない…」と礼を述べる足穂の顔はやはり憔悴している。
「それで?」
「はい?」
「何か…話があるのでしょう?」
どこか覚悟していたといった風情でこちらを見遣る足穂に、ナルトは苦笑を浮かべる。
聡い足穂は、口にせずともナルトが言いたい事を察しているようだった。
「一刻を争うというのに、私が足を引っ張っているのは重々承知しています。ですが、私の一族は紫苑様の母君にただならぬお世話になっております。紫苑様をお守りする事が出来るなら、この命、喜んで投げ打つ所存です」
「……ふぅん…」
決意を告げた足穂の耳朶を打ったのは、ナルトの冷ややかな声だった。
今まで和やかな笑みを浮かべていたとは思えない、冷めた瞳でこちらを見据えてくるナルトに、足穂は動揺する。
しかしながら、その緊迫めいた空気はほんの一瞬で、先ほどと変わらぬ穏やかな表情のナルトを見た足穂は、今のは錯覚だったのだろうかと眼を瞬かせた。
「…我々の任務は、妖魔【魍魎】を封印するにあたって、それを妨害する者達から巫女を守る事です」
唐突に、さも当たり前の事を口にしたナルトを、足穂は訝しげに見遣った。
「紫苑様を沼の国の祠まで無事送り届ける事……そして、彼女を守る事。端的に言うなら、要人警護ですね」
任務内容を確認するように淡々と述べるナルトの言葉に、足穂は頷きを返す。
ふと立ち上がったナルトに倣って、顔を上げると、朝陽が瞳の中に飛び込んできた。
「我々が守るのは紫苑様だけじゃない。貴方もですよ、足穂殿」
重要な地位にいる人という意の要人。無くてはならない意の必要。
全く違う意味だが、誰かに必要とされている人物は、その人にとっては重要な人間と同じだとナルトは暗に告げた。
立ち込める朝靄の中で。
「貴方も鬼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ