暁 〜小説投稿サイト〜
占い中毒 〜占いにハマる女たち〜
症例2 選択を諦めた安井様
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? それはおめでとう。予定日はいつ?」
「来年の3月です。」
「性別はどちらかわかっているの?」
「男の子ですって。」
「男の子ですかぁ。それは楽しみね。」
「ええ。それで先生に選んでほしくて。息子の名前。」
「ずいぶん気が早いわね。で、候補は?」
「はい。いくつかあったんですが、最終的に二つが候補に残りまして…。
 でも、どちらも気に入っていて、どうしても選べないんです。
 服だったらどちらか迷った時、両方選べばいいですけど、
 名前はそうはいかないでしょ? それやっちゃったら寿限無になっちゃう…。」
「うふふふ、ほんとね。でもそれなら、赤ちゃんが生まれたあと、
 顔を見てから決めたらどう?」
「それも考えたんですけど、実は旦那の両親が
 なんだかんだ口を挟んでくるんです。
 名づけについても、キラキラネームはダメとか、
 お義父さんの名前の一字を使ったらとか…。
 もう、初孫だから気合が入っちゃって…。
 だから、先生に占ってもらって、いい方の名前を選んでほしいんです。」
「なるほどね。名前に裏打ちがほしいわけね。
 わかりました。じゃあ、とりあえずみてあげるわ。
 候補の名前を漢字でそれぞれ教えてくれる?」
「はい。ひとつは、文士、名士の“士”という字に
 恩人の“恩”と書いて“しおん”。
 もうひとつは、甲斐の国の“甲斐”に“人”と書いて“かいと”です。」
「うーん、どちらも響きのいい名前じゃない。」
「そう思います?」
「ええ。名前っていうのは響きがとっても大事なのよ。
 その響きからいろんなことが想像できるような名前は特にいいの。
 一度聞いたら忘れないでしょ?」
「そうですよね。」
「じゃあ、それぞれカードで見てみるから、少し時間をちょうだい。」
私は念を込めながら、二者択一のスプレッドにカードを並べ、
それぞれの名前の未来を見てみました。
「うーん、カードでは甲斐人ちゃんがいいと出てるわ。」
「そうですか。」
「甲斐人ちゃんの未来のカードは帝王の正位置。
 これは指導者を意味するの。リーダーシップのある一国一城の主ね。
 士恩ちゃんの未来のカードは女帝の逆位置。これは甘ったれ、怠慢、マザコンを意味するの。」
「そう…ですか…。」
「…まだ迷ってる? もちろん、これは私の見立てで、あくまで参考程度に受け止めてね。
 最後はママであるあなたが選んであげるべきよ。」
「私が選べないから先生にお願いしてるんじゃないですかぁ〜。」
どうやら、安井様は自ら選択することを諦めてしまわれたようです。

私たちは生きていく上で常に選択を迫られます。
人類進化の過程もまたしかり。
尾てい骨はしっぽの名残で、
目頭のピンクのふくらみはもうひとつの瞼でした。
そして虫垂
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