四話 それぞれの生き方
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ュウっていつも冷めた感じだし、あんな台詞聞けるなんて思わなかったぜ」
「攻略をないがしろにするつもりはないが、俺が参加してるのはあの店の雰囲気が気に入った程度の理由だからな、あとはビリヤード台でもあれば最高なんだが」
リアルで父が経営するショットバーの風景を脳裏に思い浮かべながらシュウが語ると、アルバは瞬時目を丸くした後、噴き出すように声を漏らして笑いはじめた。その姿を理解できないという風にじと目で見るシュウ。
「……なんで笑う」
「っくっくっく――いや、お前みたいなやつがそんな理由で動いてるなんて思わなくてさ。いや、いいんじゃねえのビリヤード、今度マリにでも頼んでみたらどうよ」
「いいかもしれないな、それ。木工スキルがそこまで融通きいてくれればいいんだが、茅場晶彦の遊び心に期待するか」
「くく……、でもなんでビリヤードなんだ?」
後日馴染みの少女に多大な苦悩を与えることになる構想を組み立て始めた少年に、ようやく笑いがおさまってきたアルバが質問を投げる。
「ああ、リアルで俺の親父がビリヤードやらダーツやらが趣味でな、……認めたくないが格好よく見えて小さい頃から真似するうちに俺も趣味になってたんだよ」
「ん?つーとお前がよくマリからもらってたあれってもしかして」
「ああ、こいつのことか」
あまり一般的ではないだろうその遍歴を聞き、何かに気づいたような声を上げたアルバに対し、シュウは右手を振り下ろしアイテムウィンドウを開くと先刻酒場でマリから渡された丸い板のようなものをオブジェクト化させた。よく見ればその板には放射状に白黒の模様が描かれている。
「木製盾の応用で作ったダーツボードもどきだ。耐久値設定のせいで使い込むとすぐ壊れるから定期的に作ってもらってる。投剣スキルの練習にもなるしな」
「へー、そんなことやってたのか。確かにあの投げ方だとソードスキル発動しちまうもんな……あれ?」
感心したように腕を組み何度も頷いていたアルバの動きが止まる。
「お前のスタイルで投剣って、死にスキルじゃねえか?」
「……ああ、後から気づいた。だけど五百まで上がったスキルを捨てるのがもったいないんだよ、言わせるな恥ずかしい」
平坦な声での返答とは裏腹にシュウは顔を気まずそうにそらし、彼にしては本気で恥ずかしそうにしていた。そんな滅多に見れない醜態に声を上げて大笑いするアルバの声がしばらくの間夜の街並みに響き続けた。
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