第38話
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。でも、勉強すればするほどクロスベルの置かれている状況は困難なものである事に気付いたの。結局はエレボニアとカルバード………この二大大国の持っている重力にあらゆる正義と利害は絡め取られ、歪みを余儀なくされてしまう。私は”壁”にぶつかった。」
「………”壁”か。」
「ええ………父もそうだったけど、祖父も感じているであろう”壁”。ねえ、ロイド。クロスベル自治州の政府代表って、誰だか知ってる?」
「それは……マクダエル市長じゃないのか?」
エリィに尋ねられたロイドは意外そうな表情で尋ねた。
「ううん、正確には『クロスベル市の市長』と『自治州議会の議長』の2人よ。つまり今だと、おじいさまと帝国派のハルトマン議長という人がクロスベル政府の共同代表なの。これは自治州法で定められているわ。」
「そうか、不勉強だったな………でも、どうしてそんなややこしい体制になってるんだ?」
「決まっているわ。―――同格の代表が2人いたら政治改革が起こりにくいからよ。」
「そんな………!……いや、でも……確かにそうなるのか……?」
そしてエリィの話を聞き驚いた後、考え込んだ。
「ええ、トップが2人いた場合、どちらかが改革を起こそうとしてももう片方が必ず足を引っ張る……これはもう、政治力学としてそうなるのが歴史の必然なのよね。70年前……帝国・共和国双方の承認を受けて創設されたクロスベル自治州……その時、自治州法を定めたのは両国の法律家だったそうだけど……今にして思うと、まさに”呪い”ね。」
「………………………」
「私は……途方にくれてしまった。政治の世界にそのまま入れば、その呪いに必ず蝕まれてしまう………だから、父とも祖父とも違う別の切り口が欲しかった。」
「それが……警察だったのか。」
「ええ、政治とは別の視点で様々な歪みが観察できる場所。そこでの経緯は、いずれ政治の世界に入った時の武器になると思った。父が失敗し、祖父がなし得なかったクロスベルの改革………それを実現する手掛かりになるんじゃないかと思ったの。」
「そうか………」
「……でも、やっぱりそれはただの逃げだったのかもしれない。今日、あった出来事は、どれも予想の範囲内だったけど……想像以上に重たく、冷たかった。それを突き付けられて……またしても途方にくれてしまった。結局私は……自分一人で何もなし得ないのかもしれない。自分の道を見つけ、幸せに生きている姉と違って………道すらもわからない幼い少女のままなのかもしれない。」
「………………………」
複雑そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは黙ってエリィを見つめた後
「―――それで、いいじゃないか。」
「……え………」
静かな笑みを浮かべてエリィを呆けさせた
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