暁 〜小説投稿サイト〜
占い中毒 〜占いにハマる女たち〜
症例1 ヘビーユーザー星野様
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った人気の先生が階段から落ちて入院…、
しばらく音信不通になってしまったことがありました。

お客様から指名が入ると、職員が先生に連絡、
顧客名や生年月日をお伝えして占いの準備をしてもらいます。
私も隣の部屋に移動して準備しなくちゃ。
おっと、早速着信音が鳴り出しましたよ。
「もしもし〜、唯一神(ゆいか)先生〜?」
「こんにちは、星野さん。その後いかがですか?」
「先生〜、やっぱり彼、様子がおかしいの〜。
 浮気してるのかも〜。どうすればいい?」
「う〜ん、星野さんもお辛いですね。
 待って、カードで見てみます。少しお時間をください。」
私はいつも精神統一して、時間が掛かってでも慎重に占うことにしているの。
場合によっては一旦電話を切り、15分後にまた電話をかけてもらうこともあるわ。
だけど、星野さんの場合は私でなくても答えはわかりきっている…。
「う〜ん、やっぱり彼には気になってる女性がいるようね。
 まだお付き合いまではいってないみたいだけど。
 かなり、いい雰囲気にはなってるようね。
 彼がその気になればすぐに関係が始まりそう。」
「ええっ、なんとかして〜、先生〜。」
「そうねぇ…。彼の気持ちは揺れてる。
 できるだけ早く彼と会った方がいいわ。
 カフェデートがいいわね。
 ただその時、流れで体を許してはダメ。
 そして、根掘り葉掘り聞いてもダメ。
 何もせず、別れ際に余韻だけ残すの。
 あなたは魅力的な女性よ。自信を持って。
 自分を安売りしないでね。いいわね?」
「う〜ん…。」と星野様。
なんだか、初めてのお遣いを言いつけられた幼児のようなお声です。
ところが、その後聞こえてきたのは彼女の寝息…。
「星野さん、星野さん?」
こちらが朝ならアメリカは夜中。
たぶん、お酒を飲みながら電話していたのでしょう。
仕事と恋に疲れ、お休みモードに突入された模様。
こんなことは、しょっちゅうです。
「星野さ〜ん、一旦切らせていただきますね〜。」
電話代が心配なので切らせていただきました。
でも、目を覚ましたらまた掛けてくるかも。
占いに掛かった時間を報告するため隣の部屋へ行ってみると、
職員の西条さんが困った顔をしています。
「どうしたの?」
「星野様のカードが切れないんですぅ〜」
「また〜? 他のカード試してみた?」
「他のも全滅…」
星野様が登録されているクレジットカードは全部で4枚。
そのどれもが限度額を超えているようです。
「だから星野様の時は、先にカード番号を入れて、
 利用可能かどうか確認してって言っておいたでしょ?」
「もぉ〜!」
西条さんがむくれて、ホワイトボードに赤ペンで書き込みます。
『星野様 カードが切れないので、確認できるまで受付不可!
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