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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第4話『重なるイレギュラー』
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うな笑みを浮かべて、「ぁぃ……ぁ、ぉ……!」なんて言っていて−−
「……あぁ、それだ」
スィーラが持っていた小石を受け取り、石壁に文字を記していく。そこに刻まれた単語の意味は、単純にして明快。笑顔の似合う彼女にぴったりな名前。
──『
スィーラ
(
幸せな笑み
)
』。
「スィーラ。この辺りの言葉で、幸せな笑みって意味だよ。気に入ってくれたらいいんだがな」
ジークが確認を取るも、彼女は答えない。
壁に刻まれた文字を眺めて、心の底から幸福そうにその名をなぞる。自らの胸に手を当て、声は出ないものの、小さく何度もその名を口にしようとした。
そんな彼女の横顔はとても綺麗で、薄汚れた髪や服も気にならない程に美しい。濁った赤眼が潤い、光が射していく。
彼女が魔族だと忘れてしまうほど、その様は人間らしかった。
やがて堪え切れなくなったと言わんばかりにバッと振り返り、幸福にその顔を歪めながら、再度その言葉を口にする。
誰もに嫌われた彼女に、初めて手を差し伸べてくれた少年へ。
大好きな、彼へ。
−−『ありがとう』と、ただその言葉を。
◇ ◇ ◇
「『影法師』は敗れ、少年という拠り所を得た少女には、幸福と安らぎが訪れた。ずっと寂しかった彼女は、寄り添ってくれる人を見つけてたいそう喜んだそうだ」
まるで何処かの役者のように、芝居掛かった典型的でテンプレートな声。
手の中の筋書きを読み上げたソレはペンを取り、新たな筋書きを記しあげる。彼が『楽しむ』と言ったからには楽しませるがソレらの使命。ありきたりで愛おしい悲劇は、ソレらの性根の具現である。
あぁ愛おしき哀れな君よ、私は君を愛している。
故に記そう、君の未来を。愛する君の愛する涙を、このエンドの先に築き上げよう。
「−−しかし彼女は知らない、『彼』は世界にたった一人。代替など存在せず、そして彼もまた一人になったのだと」
泣いてくれ。
鳴いてくれ。
哭いてくれ。
その愛おしい声を聞かせてくれ。
きっと彼は答えてくれる。
例え世界の全てを敵にまわそうと、『彼』ならきっと君の側にいよう。
「さぁ、典型的にしてありきたりにしてテンプレートな悲劇を贈ろう。涙と不安と恐怖を贈ろう。案ずる事はない、この物語はきっと君に似合う世界になる筈だから」
記す。
人間の醜さを。
本物の愛を。
愛を。
愛を。
愛を。
あぁ−−
「−−君は美しい」
未来が
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