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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
11話 誰かの残り香
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でも言うのだろうか。


「その人、どうして………その………死んじゃったの?」


 そして、ヒヨリは意を決したように一気に話の核心に踏み込んだ。
 ローゼリンデは大きく息を吐くと、ゆっくりと語り出す。


「それがね、どうも人為的だったみたいなんよ。そこまで高い層で狩りをするような子じゃなかったんだけど………そん時は《笑う棺桶(ラフコフ)》がうろついてたらしくてね。その子の他にも何人かが襲われちゃったんだってさ。で、その何人かの中に、これを着る筈だった女の子も一緒に………ってワケ」
「恋人同士、ってやつか?」
「ま、そんなとこだったかな? お姉さんとしては全力で支えてやりたいような青春真っ盛りな少年少女だったんだけど………こうなっちゃうとねぇ」
「確かに、どうしようもない話だな」


 何というか、救いのない話だ。
 この世界では誰かが何処かで死ぬのは避けられないところがある。どこまでリスク管理に徹底しようとも、ほんの些細なきっかけで盤石の準備が一瞬のうちに瓦解することだって大いに起こり得る。それでも、そんな悲劇を人為的に起こす悪意には、如何なる備えさえも無為に終わってしまうのだろうか。
 自分達の快楽の為だけに誰かを殺せる彼等を、糾弾する権利は俺に与えられないだろうが、それでも相容れないが故の嫌悪感はある。何の理由もなく他者の命を一方的に奪う行為を、俺は善しとはしていない。


「………はい、ということでこのお話は終わり! 最近は危ない人が多いから気を付けてねーってだけだからさ、そんなしんみりしないでよね?」


 そう宣い、無理矢理空気を換えようとする赤ジャージのぎこちなく奮闘する。
 こんな開店初日の晴れの日に暗い話をわざわざ切り出したのだって、ローゼリンデなりの想いがあったことだろう。注文の品を取りに戻ってくるはずの客が、オーダーしたっきりで死亡するというのは、商売人としても辛かったはずだ。
 そのブラウスをプレゼントされて喜ぶはずだった誰かがいて、その姿を見て喜ぶ誰かがいて、そして、ローゼリンデだってその二人を祝福する筈だったのだから。


「善処する」
「ふむ、リンたんの《善処》は大体が全力投球だもんね。信用しとくかんねー?」


 言われた通り、妥協するつもりは毛頭ない。
 自分の生存の為に、友人の生存の為に、俺は何を犠牲にしようと出し惜しみをすることはないだろう。
 それでも、断言するような無責任な真似など出来よう筈もない。
 そんな思考が漏れたように、誰にも聞かれないような囁きが零れる。


「生きるか死ぬかなんて、その時になるまでどうにもならないだろだろうに」
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