第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
11話 誰かの残り香
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いつつ、ローゼリンデはガラスらしき素材で出来たポットを氷で満たし、茶葉を多めに入れて運び込む。時間を置いてゆっくり解けるということはなく、既に全て溶解した琥珀色の液体をグラスに注いではバーカウンターに置き、着席を催促するように天板を数度叩く。こうしてみると、お針子なのかカフェなのか判然としない時が多々あるが、茶はあくまでもサービスの一環なのだとか。味や見た目のような品質は明らかに凝っていて、挙句にはカクテルまで出せると豪語するほどだ。これほどの高い意識を持ちながら、本人は自作した赤ジャージという体たらく。日常生活にも本気を出してもらいたいものだと思ってしまうのは俺だけではないだろう。
しかし、現状におけるアルゴの立場からしてみれば、論点はずれるだろう。当人は苦虫を噛み潰したような、何かを激しく後悔するような表情で俺の顔を見上げている。
「………リンちゃん………この胡散臭い接待、なんかキナ臭くないカ?」
「良くて慈善事業ってところか」
「オイラにも色々入り用ってのがあるんだけどナー………」
半ば感情の籠っていない悲鳴を受けつつ、アルゴは言われるがままに、その小さい背中を哀愁で更に小さくしつつ席につく。
ローゼリンデの欲しがるような情報と言えば、差し詰め開店セールに当たっての目玉商品になるようなレア素材の所在か、はたまた裁縫スキルの専用アイテムをハイグレード品に交換するためのクエストか。一見すると、俺に丸投げされそうな上に目的の品を現地調達させられそうな、そんな不安が脳裏を過ってしまう。
そう思うと、西洋の古民家調な内装の縫製店の筈なのに、突如として魔窟と化したように感じてしまう。ただでさえ今日はダンジョン攻略を取り止めた休日なのだ。訳の分からない理由でこれ以上時間を取られても困る。そそくさとこの場を後にしようと出入口に向けて歩を進めようとすると………
「燐ちゃん、どこ行くの?」
………不思議そうに首を傾げたヒヨリに、袖を掴まれて動きを封じられてしまった。
「………その、お祝いの品っての? ちょっと買ってこようかなと」
「良いよ良いよ、そんなの気にしなくて〜。これからウチの方でお願いすることなんだしさ」
カウンター越しのローゼリンデの言葉で既に逃げ道を失ったことを悟り、アルゴの隣に差し出されたグラスを添えられた席に促される。ヒヨリとティルネルのぶんまで冷茶が用意され、呼ばれた全員が席に座ると、ローゼリンデは満面の笑みで言葉を繋げた。
「というワケで、アルゴっちには次の攻略本でお店の宣伝やってもらいたいってことで。そこらへん諸々たのんだぜ!」
「………え、それだけなのカ?」
「うん、そんだけよー………ってか、なーんかお姉さんの頼み事が嫌そうだったからプレッシャー掛けて
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