五十五話:蘇り
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を継がなくてはね。そこでだ、私は旧き世界の象徴たるこの場所を新しき世界の始点とする。この場所より世界を創造する!】
何を言っているのだと誰もが理性で考える。常時であれば一笑に付す。しかしながら、このような緊急事態の中で、何よりも本能が警鐘を鳴らすのだ。この男が言っていることは真実だと。
【安心したまえ、君達の生きる世界は私が保証しよう。保護して欲しければ保護もしよう。もっとも……その後にどのような扱いになるかは分からないがね、くくく】
顔の見えない男のゾッとする様な笑い声に誰もが言葉を失う。彼は人を尊んでいる。しかし、それはあくまでも実験材料としてだ。彼にとっては他者は同じ人種ではないのだ。人間が檻に入る猿を見ても同族だと思わないように、彼もまた人間を見て同族という考えを抱かない。
【勿論、中には納得できない者もいるだろう。そうした者達は私の下に来たまえ。期限は一時間だ。現在を守りたいのなら、己の願いを叶えたいのなら、世界を救いたいのなら、その欲望を私に見せたまえッ! これは祭りだ! せいぜい派手にやろうじゃないか!!】
通信が切れる。狂人の演説などまともな精神状態の人間にとっては笑い話に過ぎない。だが、おのれの生命を脅かされるという極限状態では悪魔の囁きになりかねる。
「も、もう無理だ……諦めよう」
「何を言っているんだよ!? 逃げるなよ!」
「このまま戦っても殺されるだけだ! 第一守るものもないのになんで戦うんだよ!? 見ろよ、俺達の誇りだったものは木っ端みじんじゃないか!」
得体の知れない力を持つスカリエッティに加え、機械的に自分達を殺しに来るガジェット。思わず一人の局員が弱音を吐く。それに対して仲間は胸ぐらを掴み激昂するが反論されて何も言えなくなる。
今日まであの本部に務め、陸を守っているという誇りが過酷な環境にいる彼らを支えてきていた。だが、たった今その誇りの象徴が砕かれたのだ。恐れて当然である。気力を失って当然である。思わず固まったまま立ち尽くす二人。しかし、都合よく時間は止まってはくれない。動かない人間などただの的に過ぎないとばかりにガジェットはレーザーを放つ。
「しまった…!」
自分達の不覚を呪うがもう遅い。既に避けられる距離ではない。もうダメだと思い目を瞑ろうとしたところで―――武骨な薙刀がレーザーを弾き返した。
「戦場でよそ見をするな」
「あ、あなたは…!」
突如として現れ自分達を救った武人の姿に呆気にとられる陸士達。しかし、肝心のその武人、ゼストは彼らのことなど気にすることもなく大量のガジェットを一閃していく。そこでようやく相手が敵のSランク魔導士だと分かりさらに混乱しながらも武器を構える。
「心配はいらん。ゼストは味方だ」
「レ、レジア
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