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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百三十幕 「血を吐く人に限ってなかなか死なない法則」
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じい速度でブレた。もうこうなるとどこが膝なんだかサワムラー並みにわからない。分からないが、一つだけ言える事実がある。
「ひょいっと」
「あ」
ユウがさりげなく後方にすり足で避けると、鷲の蹴りはボヒュッ!!と空を切った。
太ももを狙ってきてるんなら避ければいいじゃない。ジョウならば「男、承章に後退の二文字はないッ!!」とか言いながら気合で何とかしてしまうんだろうが、身の程をわきまえているユウがそんな無茶をするはずもなかった。
「儂の技……太ももの筋肉断裂して悶え苦しめ軌道超変化キックが避けられた……もー駄目じゃ。もーやる気失せた。せっかく若人が痛みに悶絶する姿を見てやろうと思ったのにマジ空気読めん若人だわー」
「性格悪いですね……というか、避けられるものは避けるもんでしょ普通?」
「だからお前はアホなのじゃあッ!!避けられたら儂がツマランじゃろッ!!接待せい接待!!」
理不尽の権化のようなジジイは一通り支離滅裂な要求をしたのち、自分の蹴りが避けられたことで露骨にテンションが下がったのか腰を曲げながらショボーンと家に戻り始める。いい年こいて子供みたいなジジイである。
「…………ツマラン。飽きた。メシ作るぞボウズ。パニ食いたいからパニ作れ」
「知りませんよそんな料理。大体それ
愛娘
(
ましろ
)
ちゃんがちゃんと食べられる奴でしょうね?聞きましたよ、鷲さんカワゲラの佃煮とかハチノコとか虫料理が異常に好きでましろちゃんを幾度となくドン引きさせてきたそうですね。いい加減嫌われますよ」
「馬鹿なましろが儂のことを嫌いになるなどありえんもしも本当に嫌いになったら儂そのまま天寿を全うしてゴベファッ!?」
「光景を想像しただけで血を吐いたっ!?」
ともかくユウは現在、この兄とどこかノリの似ている気がするジジイとその娘――ずいぶん年が離れているが――と共同生活を送っている。
「アア……アぁ……死んだ妻が屍山血河の向こう側から手を振っておる……」
「奥さんなんでそんな怖いところにいるの!?恐妻的な心象風景ですか!?しっかりしてください娘さんをおいて一人先立つ気ですか!!というか僕の修行はどうなる!?」
「――わ、儂は……儂は死んでも娘はやらんッ!!……ところで俊則、メシはまだかいの?」
「いや純粋に俊則って誰ぇッ!?」
念のために言っておくが、決して介護のために通っている訳ではない。近所のおばさんたちから新人ヘルパーと幾度となく勘違いされたり「草薙さんちのおじいさん、最近痴呆と夢遊病が併発してヘルパーさん泊まり込みみたいよ」と言われていたとしても………これは、修行である。
つらい。
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