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Three Roses
第四話 新王の即位その一

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                 第四話  新王の即位
 王が死んだ、そのことを聞いてだった。
 マリアはその場に崩れセーラは持っていた書を落とした、マリーは顔を俯けさせた。
 そしてだ、マリーが最初に言った。
「二人共泣いてはいけません」
「けれどマリー、王が」
「亡くなられたのです」
「王家にある者、その血を引く者はです」
 マリーだけでなくマリアにも言うことだ。
「決してです」
「泣いてはならない」
「そうだというのですね」
「そう」
 こう言うのだった。
「絶対に」
「そうね」
 マリアが最初にそのマリーに応えた。
「王家にあるものはね」
「そうですね」
「ええ、その通りよ」
 マリアは泣いていた、だがその涙を自分で拭ってだった。
 そのうえでだ、あえて強い顔になってマリーに応えた。
「貴女の言う通りよ」
「では」
「私はもう泣かないわ」
 マリアはマリーに約束した。
「何があっても」
「セーラ、貴女も」 
 マリーはセーラには自分から声をかけた。
「王家の血は貴女にも流れているのですから」
「だからですね」
「貴女は普通の貴族とは違います」
 それ故に二人の王女といつも共にいるのだ、傍流であり王位継承権はないがそれでも王家の血を引いているからだ。
「ですから」
「泣かずに」
「こうした時もです」
「誇りを忘れない」
「そうあるべきなのです」
「そうですね」
 セーラもだ、ここで頷いた。
 そのうえでだ、顔を上げて立ち上がってだ。彼女もまた。
 自分で涙を拭ってだ、マリーに応えた。
「わかりました」
「悲しくとも」
 例えだ、そうであってもというのだ。
「王家にある者は泣いてはいけません」
「常に誇りを忘れず」
「どれだけ悲しくとも」 
 それでもというのだ。
「胸を張っているべきです」
「その通りですね」
「では。いいですね」
「はい」
 セーラは必死にだ、確かな声を出してマリーに応えた。
「それでは」
「お父様は亡くなられました」
 マリーは必死に涙を堪えつつ二人にこのことを彼女の口からも告げた。
「そしてやがてです」
「葬儀が行われるわね」
「その後で」
「ええ、太子が王になられるわね」
「新しい時代がはじまります」
 太子が新しい王になることによってというのだ。
「では私達はです」
「その新しい時代に向かい」
「その中で己の務めを果たすべきですね」
「そうです、では立って」
 そして、とだ。マリーは二人にさらに言った。
「前に向かいましょう、まずは」
「まずはというと」
「これより神学の講義です」
 マリーが言うのは日常のことだった。
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