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忘れ形見の孫娘たち
4.明日ちゃんと笑うために
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ん提督に会わせてください」
「うん。分かった」

 僕は三人を玄関に上げ、奥の和室へと案内した。

「……さっきはごめんな」

 和室に向かう最中、涼風ちゃんが僕のシャツの裾をちょんちょんと引っ張ってきた。

「? 何が?」
「あたい、アンタが適当なこと言ってると思って……」
「気にしてないよ。五月雨ちゃんが大切だから怒ったんでしょ?」
「うん」
「だったら気にしない気にしない。僕も気にしてないし」
「そっか。ありがと」

 うん。涼風ちゃんはいい子だ。本当に五月雨ちゃんのことを大切に思ってるみたいだ。

 そして再度、僕のシャツの裾をちょんちょんとひっぱる感触があった。

「ねえねえ、かずゆき」
「ん? なんだよ」
「涼風ちゃんと仲直り出来てよかったね。初対面で涼風ちゃんが怒りだした時はどうしようかと思ったよ。ヒソヒソ……」
「初対面で涼風ちゃんが怒ってた理由の原因は鈴谷だけどな……」
「? 何こそこそ話してんだ?」

 とこんな具合で僕達三人は軽く会話をしながら奥の和室へと移動する。五月雨ちゃんだけは一言も口を利かず、決意を秘めたまっすぐな瞳で、前を向いて歩いていた。

「かずゆきぃ。五月雨ちゃんに一目惚れ?」
「お前あとでロメロ・スペシャルで折檻」

 そうして和室に到着。襖を開け、五月雨ちゃんと涼風ちゃんを中に招いた。

「う……」
「そんな……覚悟してたけど……ひこざえもん提督……」
「てい……とく……」
「提督……ひこざえもん提督……」
「なに……勝手に、おっ死んじまってんだ提督……べらぼうめぇ……!」
「ひこざえもん提督……帰ってきて下さい……ひぐっ」

 覚悟していたとはいえ……やはり事実を受け止めるのはまだキツかったようだ。遺影を見る五月雨ちゃんのぱっちりした両目にどんどん涙が溢れてきた。涼風ちゃんは涼風ちゃんで両肩をわなわなと震わせ、泣くまいとしているようだった。

「ていとく……ていとく……」

 力なく崩れ落ちそうになっていた五月雨ちゃんを、その後ろから涼風ちゃんががっしりと肩を支えて立たせていた。

「五月雨……泣くんじゃねえッ……!」
「うう……ひぐっ……ていとく……」
「あたいと約束……ひぐっ……したじゃねェかッ……ひこざえもん提督と笑顔でお別れしようって……約束……した……ひぐっ……じゃ……」
「でも……ひぐっ……うう……」
「だから……あたいは……泣かねーぞ……!」

 二人は身体を寄せあって、必死に泣くまいとしていた。そんな二人を見守っていると、三度ぼくのシャツの裾をちょんとひっぱる感触があった。

「?」

 鈴谷が僕のシャツの裾を引っ張っていた。その顔にいつもの軽薄さはなく、鈴谷の真剣な眼差しは僕にこう訴えか
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