暁 〜小説投稿サイト〜
忘れ形見の孫娘たち
4.明日ちゃんと笑うために
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青な顔で、身体が少し震えていた。

「五月雨、大丈夫か?」
「うん……涼風ちゃんありがとう」

 気を抜くとそのまま倒れてしまいそうな五月雨ちゃんの肩を、涼風ちゃんがガッシと掴んで支えていた。顔つきがよく似てる二人だから、きっと二人は姉妹のはず。だとしたら、この五月雨ちゃんも元気で明るい性格のはずだけど……今の彼女からは元気の“げ”の字も出てこない。子音の“G”すらない。詳しくは知らないけど、元気のGははじまりのGではないのか。

「五月雨ちゃんはずっと提督と一緒にいたからね……」
「そっか……」

 恐怖で身体を震わせている鈴谷の話によると、五月雨ちゃんはうちの爺様にとっては初めての仲間らしい(“初期艦”とか言うそうな)。大淀さんと同じく、みんなの中でもっとも爺様と長く付き合ってきた子ってことだ。

 だから鈴谷が爺様の死を伝えた時、五月雨ちゃんは相当動揺したそうで。本人は『提督の死を受け入れなきゃいけない』ということは分かっていながらも、いざここに来てみると、その恐怖と不安で身体がすくむようだ。その様子は見ているこっちも不安になる。

「……五月雨ちゃん」
「……はい」
「もし辛いなら、今日は素直に帰ってもいいんじゃないかな?」

 僕は、思ったことを率直に伝えた。こういう時は回りくどい言い方はしないで、すっぱり言ってしまったほうがいい。

「てやんでぃ! ちったぁ五月雨の気持ちも考えやがれ!!」
「……」
「五月雨はなぁ! 確かに辛いけど、それでも必死に前に進もうとしてるんだ! ひこざえもん提督の孫だかなんだか知らねーが、テキトーなこと言ってんじゃねえ!」
「適当なことなんて言ってない。爺様の死を納得して受け入れるなんて、今日が無理なら明日でもいい。明日も無理なら来月でいい。こういうことは無理しちゃいけないんだ。親しい人の死はそれだけ重いんだ。無理矢理受け入れるものじゃない」
「……」

 涼風ちゃんが僕の言葉に噛み付いてくるけど、僕も引く気はない。こういうことは急いで無理しちゃいけないんだ。爺様の死を受け入れるのは、今日じゃなくてもいい。受け入れても大丈夫なように、心の準備が出来てからでも遅くはないんだ。

「……和之さん、ありがとうございます」
「どうする? 今日はやめとく?」
「いえ……私は、覚悟してここに来ました。私は今日、ひこざえもん提督にお別れをいいます」

 僕の提案への五月雨ちゃんの返事はノーだった。その時の五月雨ちゃんの顔色は変わらず真っ青で身体も震えていたけれど、その目は涼風ちゃんと同じく、強い意思が感じられる力強いものだった。……彼女は、ちゃんと覚悟をしているようだった。ならば、僕はもう何もいうことはない。

「……覚悟してるんだね」
「はい。だから、ひこざえも
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