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第四章

「この味、男の子の誰かが食べたらね」」
「もう一発よね」
「美味しいお菓子を作る女の子」
「これいけるわよ」
 こんな話になっていく。この辺りはやはり女子高生である。
 そしてだ。こんなことを話すのだった。
「まあ顔もいいし」
「性格もね。嫌味なところとか全然ないし」
「彼氏とかさ。そういうの」
「考えたら?」
「んっ?彼氏?」
 本人の言葉が来た。随分と呑気な調子である。
「彼氏って?」
「だから。彼氏よ」
「そのままよ」
 言ったそのままだと返す女組だった。
「あんたも彼氏とか作ったら?」
「ゲットしたらどうなの?」
「別に。それは」
 恭子の返答はだ。どうでもいい感じだった。
 そしてそのどうでもいい感じでだ。こう言うのだった。
「いらないし」
「いらないの?」
「うん、別にね」
 本当にだ。どうでもいいという感じで言うのである。
 そんな彼女の言葉を聞いてだ。女組はだ。
 皆呆れた顔になってだ。こう返すのであった。
「だからね。それはね」
「駄目でしょ、女子高生として」
「ここで一気に彼氏をゲットしてよ」
「そうしないと駄目でしょ」
「いいのよ、だから」
 本当にだ。何も焦っていない感じの恭子だった。
 金色のスプーンを手に取りその薄いオレンジのアイスを食べながらだった。
 彼女は言うのだった。こんな感じでだ。
 そんな彼女に皆やれやれといった顔だった。しかしだ。
 ある日だ。その彼女の前にだ。すらりとしたさらさらとした茶色の髪の男子生徒が来たのである。
 栗色の目が大きく唇が小さい。顔は雪の様に白く一見すると女の子の様に見える。その男子生徒が来てだ。こう彼女に言うのであった。
「あの、いいですか?」
「何なの?」
「僕、水橋健一郎といいます」
 名前も名乗る彼だった。
「あの、二年四組の」
「あっ、同じ学年の」
「二組の松坂恭子さんですよね」
 その彼、健一郎は恭子の名前を確認してきた。
「そうですよね」
「はい、そうです」
 まさにだ。その通りだと答える恭子だった。
 そしてそのうえでだ。恭子にこう言ってきたのである。
「いいでしょうか」
「いいって?」
「お菓子食べていいですか?」
 これが健一郎が恭子に言いたいことだった。
「松坂さんの作ったお菓子」
「うん、いいよ」
 返答は一言だった。それで終わりだった。
「恭子のお菓子を食べたい人はね。誰でもね」
「いいんですか」
「そうよ。あとね」
「あとは?」
「敬語止めよう」
 楽しく笑ってだ。こう健一郎に話したのだ。
「それはね。止めよう」
「敬語を」
「だって。同じ学年じゃない」
 それでだとだ。止めようというのである。

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