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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第3話『不穏な陽炎』
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で行ったのだ。そのまま馬乗り状態になり、ジークに食って掛かっていた訳だが。
それはつまり、側から見れば少女が男を押し倒している光景な訳で。
先程の軽口混じりの言い争いも、内容を詳しく聞こうとしなければただの痴話喧嘩になる訳で。
基本そういう事に疎いメイリアでも、それくらいは分かる。
「……もっと早く言えバカーーーーっ!」
少女の小さな拳骨が、ジークの頭頂部に炸裂した。
◇ ◇ ◇
「……とりあえず、警戒はしとけよ」
「分かってるわよ。木偶の坊じゃないんだし」
日を跨いで再び見る木漏れ日の降る道を、二つ分の足音が過ぎていく。
木々を塗って降り注ぐ陽光が先を行く美しい金髪に反射し、目に刺さる光を手で覆い遮る。
彼女の手には木製の杖が握られており、それを重そうに持つ彼女の姿に吹き出しそうになる。が、実際吹き出しでもしようものなら魔法使いには見合わぬ拳が飛んでくるので決して口にはしない。
「ねぇ、まだなの?」
待ち切れないと言わんばかりにソワソワしつつ、メイリアが訪ねてくる。
魔族と会うのを楽しみにするなど褒められたことではないのだが、今回は条件が条件なので流しておく。というか、何が彼女をそこまで突き動かすのか少々不安になって来たというのがジークの本音ではあるのだが。
「もうそろそろ……ほら、川が見えてきたろ?そこを登れば会える」
道の先に見える川を指し示し、小走りに先を歩くメイリアの後を追う。それを確認したメイリアもまた走り出し、川に出ようと−−
「──!止まれメイリーッ!」
「──へっ?」
咄嗟に振り返ったメイリアの背後。
全
(
・
)
く
(
・
)
音
(
・
)
の
(
・
)
無
(
・
)
い
(
・
)
川
(
・
)
が揺らぎ、陽炎が巨大な影を形作る。
反応出来ない。幾らジークの身体能力があれど、一瞬の内に詰められる距離ではない。手を伸ばし、その名を呼ぼうと、届かない。伸ばした手を掴もうとメイリアがその小さな手を伸ばし、その赤眼に見えていないながらも微かな不安を浮かばせる。
漆黒の巨人は右手の巨斧を掲げ、その鈍色の刃を黄金の長髪が覆う首元へと振り下ろし−−
──バギァッ!
人体から鳴ってはいけない音を、森に響かせた。
深緑の風に、無力な少年は吹き晒される−−
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