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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
外伝
外伝《絶剣の弟子》F
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いてもおかしくはない。
 ユウキさんの車椅子を押していたのはアスナさんだった。白を基調とし、赤や茶色てアクセントを加えたお洒落な服装で、栗色の髪だけはゲームと同じように結ってある。ALOでは青色というイメージがあったが、こういう色合いも凄く似合っている。
 と、そこまで思考が至った後にふと違和感を感じた。

「ところでライト君。そこで何していたの?」
「いえ……何だか入り難くて」
「そんな緊張しなくても良いのに。みんなリアルでもゲームと同じように優しい人たちだよ」
「は、はぁ…………?」

 "リアルでもゲームと同じように"。そう、これだ。俺は昨日、アスナさんの容姿をランダムパラメーターの起こした奇跡だのと評したが、それと全く同じ容姿をした人物が目の前に居る。というか、ユウキさんももう少し肉付きをよくし、髪を伸ばしてパールブラックに染めればかなり近くなるのではないだろうか。

「……?ライト、どうしたの?」
「あ、あの。ユウキさんもアスナさんもゲームのアバターとそっくりなので、驚いてて」
「あー、なるほどね」
「これから会う人たちは殆どそんな感じだよ」
「そ、そうなんですか……?」

 ALOの容姿はアバターを新規作成する時にランダムパラメーターで決定される。なのに、関係者の殆どが現実とほぼ同じ顔であるというのは一体どういうことなのだろか。そのことを尋ねようと言葉を紡ぎ掛けた時、自然とその言葉を飲み込んだ。
 自分でそれを認識した時、唐突にこの件に納得がいった。これは誠実であろうと仮面を被り続けた経験の副産物だ。人が答え難いことは最初から訊かない。それで関係がギクシャクしてしまうからだ。だから、そういうことを事前に、直感的に察知する。
 多分、この件は答えたくないことでは無く、答え辛いことだ。出会って日が浅いような俺は踏み込んで行けない事情がある領域だ。そんなことをふと考えて、ごく自然に話を終わらせた。

「それじゃあ入ろっか。ドア、開けてくれる?」
「分かりました」

 やや厚みのあるドアを開けると店内の何とも言えない独特の香りが鼻を突いた。肉が焼けるような香ばしい香り、高いウイスキーやブランデーの沁み渡るような匂い。自然光を少なく、淡い光で眩し過ぎないようにライトアップし、アメリカのジャズが流れる店内はどこか懐古的な気分になった。

「いらっしゃい」

 バーカウンターの向こうには巨漢の人物が居た。濃い茶色の肌にスキンヘッド。筋骨隆々の逞しい体格はどう見ても日本人のそれではないが、先ほどの「いらっしゃい」は完璧な日本語だった。

「あ、あの。今日、貸切にさせて頂いてる者で……幹事とかじゃないんですけど……」
「ああ。話は聞いてる。見ない顔……ということはあんたが"ライト"か?」
「あ、はい」
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