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真田十勇士
巻ノ四十六 婚礼その七

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「忍としてな」
「それぞれ変装し」
「身分も隠し」
「主に野山を進み」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、そうしていくぞ」
 やはり穏やかに言う幸村だった。
「九州においては」
「ではこれよりですな」
「我等は女房達に別れを告げ」
「そのうえで出発となりますな」
「そうして来るのじゃ」
 また言った幸村だった。
「よいな」
「では殿もですな」
「これよりですな」
「奥方様に暫しのお別れをですな」
「言われますな」
「そうしてくる、ではな」
「はい、さすれば」
 こうしてだった、幸村は。
 妻のところに行きだ、こう告げたのだった。
「ではな」
「はい、ご武運を」
 竹は微笑んで夫に応えた。
「楽しみにしております」
「そう言ってくれるか」
「旦那様ならです」
「それがしならか」
「必ず帰ってこられます」
 それ故にというのだ。
「その心配はしておりません」
「そうなのか」
「そしてです」
 さらに言う竹だった。
「旦那様は武士としてもです」
「恥ずべきことはか」
「されません」
 全く、という言葉だった。
「ですからこのこともです」
「安心しておるか」
「私は旦那様が武勲を挙げられることをです」
 まさにそれをというのだ。
「楽しみにしているだけです」
「そう言ってくれるか」
「では」
「うむ、ではな」
 幸村は竹と笑顔で別れてだった、そして。
 十勇士達と共にまずは大坂に向かった、この時にだ。
 海野がだ、こう幸村に述べた。
「若殿は軍勢を率いられてですな」
「そのうえでな」
「大坂に、ですな」
「向かう」
 幸村もこう話した。
「そうなっている」
「そして我等は」
 望月はその大坂の方を見て言った。
「十一人だけで」
「大坂からな」
「瀬戸内に出て、ですな」
 根津は微笑んで主の言葉に応えた。
「船でまずは博多ですな」
「そうなる、陸を進むよりも」
「はい、やはり船です」
 筧はこう幸村に述べた。
「あちらの方が速うございます」
「昼も夜も進めるからな」
「歩くなら馬でも夜は休まねばなりませぬが」
 穴山は自分の足を見ている、彼等は皆忍であり健脚であるが。
「船はどちらも進めますからな」
「交代で漕いでな」 
 その船をとだ、幸村は穴山に答えた。
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