暁 〜小説投稿サイト〜
忘れ形見の孫娘たち
3.爺様のスイカ
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えつつ、僕は台所に行って自分と鈴谷の分のコップを出し、冷蔵庫の麦茶を注ぐ。

 同じタイミングで、廊下からスリッパのパタパタという音が聞こえてきた。大淀さんが和室から出てきたみたいだ。僕はコップをもう一つ出し、大淀さんの分の麦茶を注いで、お盆に乗せた。

「もういいんですか?」
「はい。ちゃんとお別れを言うことが出来ました。和之さんには感謝しています」

 大淀さんは居間に来て鈴谷の隣に座った。麦茶を乗せたお盆を持って僕もテーブルまで行き、大淀さんと鈴谷の前に麦茶を置いた。彼女の目は赤く腫れていた。鈴谷とは違い、和室で相当悲しんで泣いていたようだ。

「どうぞ。蒸し暑いですから麦茶の方がいいと思います」
「ありがとうございます。いただきます」

 僕が出した麦茶のグラスを両手で上品に持ち、静かに口をつける大淀さん。その所作は美人秘書を彷彿とさせ、美しい。

 一方……

「あざーす! やっぱこの季節は麦茶だよねー!!」

 僕が麦茶のグラスを置くやいなや片手で乱暴にグラスをぶんどり、そのまま盛大に麦茶を飲み干す鈴谷。こら鈴谷。女の子が喉をぐぎょぐぎょ鳴らしながら麦茶を飲むんじゃありませんっ。

「……昨日、鈴谷からひこざえもん提督が逝去されたとの報告を受けた時は本当に驚きました……信じられませんでしたが……」

 そう言いながら麦茶のグラスを置き、再び目にいっぱい涙を溜め始める大淀さん。こんな美人な人をここまで泣かせた爺様……一体この美人さんとどんな関係だったんだ……

「まさか……本当に……ひこざえもん提督……どうして……うう……」
「大淀さん、元気出そ? 泣いてる大淀さんなんて、提督も見たくないよ」

 本来なら見ているこちらにも悲しみが伝わる二人のシーンなんだが……爺様が爺様な上に、悲しんでいるのはコスプレしてる二人……どうしても僕にはシュールに感じてしまう。いや悲しみは伝わってくる。伝わっては来るんだけど……

「……そうですね。鈴谷の言うとおりですね。これではひこざえもん提督に顔向けできないですね」
「そうだよ! “女の子は笑え! それが男を落とす一番の武器だ!!”て怒られちゃうよ?」
「ですね。ひこざえもん提督に怒られちゃいますね」

 元気はまだ戻ってないけど、大淀さんが涙目で少しだけ微笑んだ。よかった。少し気持ちが持ち直したのかもしれない。

 でも二人共爺様の名前に『提督』なんて仰々しい敬称をつけて大真面目な顔で『ひこざえもん提督』とか言うからどうしてもそれが僕を魅惑の異空間へと誘う。

 んー……なんつーかホント、違和感しかない。コスプレ衣装に身を包む二人の女性が、爺様の名を『提督』という敬称をつけて呼ぶ……

「んー……」
「?」
「あ、し、失礼……ところ
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