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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六話 出撃
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帝国暦 487年8月 4日  新無憂宮 バラ園  ラインハルト・フォン・ローエングラム


ブルクハウゼン侯爵たちを憲兵隊に引き渡した後、あらためて反乱軍討伐の勅令を受けたが、俺は何の感銘も受けなかった。おそらくあの場に居た人間は皆同じ思いだろう。

皇帝と三人の重臣達の凶笑に毒気を抜かれたと言って良い。式典の最後まで上機嫌な皇帝と三人の重臣。一方で顔を青ざめさせた貴族たち。ありえない構図だった。

既に憲兵隊はオーディンにあるフェザーンの弁務官事務所を急襲している。これでルビンスキーはオーディンにおける耳目を失った。帝国内で何が起きているか、判るまい。

これから宇宙艦隊は反乱軍迎撃に動く。帝都が空になる以上それなりの手配りがいる。オーディンでは反逆者マクシミリアンに通じるものが居たとして、憲兵隊が厳戒態勢を取り始めた。

さらにリューネブルク中将率いる装甲擲弾兵第二十一師団は東苑と南苑の間に部隊を展開した。リューネブルクはヴァレンシュタイン司令長官の腹心と言って良い。そのことは貴族たちも充分に分っている。彼らが妙な動きをすることは無いだろう。

宇宙艦隊司令部に戻ろうとするとリヒテンラーデ侯が俺を呼び止めた。
「ローエングラム伯、陛下が卿をお召しじゃ」
「陛下が?」

「うむ。バラ園に来るようにとの事じゃ」
“バラ園”つまり非公式ということか。一体何のようだ? 先程の光景を思い出すと余り会いたくは無い。

しかし、嫌だとも言えない。そんな俺の内心を見透かしたのだろうか、リヒテンラーデ侯が何処か面白そうな表情で俺を見ている。喰えない爺様だ。

リヒテンラーデ侯と別れバラ園に向かう。皇帝は時折バラ園に臣下を呼ぶ。呼ばれるのはごく僅かな一握りの臣下だ。皇帝の信頼厚い文武の重臣達。俺も今回その仲間入りという事か。喜ぶべきか、悲しむべきか……。

考えてみれば、ヴァレンシュタイン司令長官は未だ大将にもならぬ内からバラ園に呼ばれていた。皇帝から見て信頼できる臣下だったのだろう。

バラ園に赴くと皇帝はバラの花を楽しそうに見ていた。俺が来たのに気付いていないはずは無い。だが皇帝はバラだけを見ている。俺は皇帝の傍に近づき片膝をついた。

「陛下、リヒテンラーデ侯より御呼びと伺いましたが?」
「うむ。ご苦労じゃな」
俺の頭上から皇帝の声が降りてくる。改めて思った、こんな声だったか? いや、確かに皇帝の声だ、しかし何処か微妙に違うような気がする。何だ?

「武勲を期待しておるぞ、ローエングラム伯」
「ありがたき御言葉、臣の全力を尽くします」
「うむ」

通り一遍の挨拶で終わりだ。どうやら皇帝の気まぐれだったらしい。そう考えていると、また声が降ってきた。

「前回の敗戦よりうるさい事を申す者どもが居っ
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