ワガママ
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カミューニside
「ラクサスさん!!ラクサスさん!!うわぁ〜ん!!」
目の前にうつ伏せに倒れ、血の海に浮かんでいる状態のラクサスを見て、シリルは体を揺すりながら大号泣しているみたいだ。そんな彼の体を侵食していた模様が、少しずつ左腕に戻っていているようだ。
「セシリー!!来い!!」
「わかった〜!!」
近くの草むらに隠れていたセシリーを呼び寄せ、彼女とともにシリルとラクサスの元へと駆けていく。
「ラクサスさん!!しっかりして!!」
「シリル!!落ち着け!!」
いまだに涙が止まっていない様子のシリルの肩に手を乗せ、体を揺する。それに気付いた彼は、こちらを振り向いたのを感じた。
「カミューニさん!!ラクサスさんが・・・ラクサスさんが・・・」
「落ち着いてってばシリル〜!!」
俺の服を掴んで泣きついてくるシリルをセシリーも落ち着けようと奮闘するが、なかなか彼が冷静になることはない。そんな水竜の頭に、俺はそっと手を乗せた。
「大丈夫だ、ラクサスはまだ生きてる」
「え?」
涙を拭う少年に顎で倒れている男を見るように指示する。彼はそちらにゆっくりと振り返ると、微かにではあるが、ラクサスが息をしていることに気付いた。
「ただ、ラクサスはかなり危険な状態だ。すぐに治療をしないと間違いなく死ぬ」
「治療・・・」
ここまで言えばわかるだろうと思っていたが、まだ頭が混乱しているらしく、これからどのように行動すればわかっていない。俺はシリルの頭に乗せていた手を、背中へと移動させていく。
「今ラクサスを救えるのはお前だけだ!!」
「お・・・俺だけ・・・」
「そうだ!!仲間だろ?助けてやれよ」
そう言って背中を押すと、シリルはコクンッとうなずいた後、血の上に倒れているラクサスを治すためにそのそばへとしゃがむ。
「ごほっ・・・お前ら・・・本当アホだな」
「「!!」」
シリルがラクサスの治癒を開始したのとほぼ同時に、二人の奥から一人の男が痛む体を押さえながら立ち上がるのを感じる。
「敵庇って大ケガしてちゃあ、世話ねぇぜ」
先程から暴走したシリルの力に圧倒され、ほぼ瀕死の状態だったノーラン。そいつは、動くことすら困難であるはずの体でその場に立ち上がっていた。
「まぁいい。シリルの治癒力はウェンディやシェリアより劣る・・・今のうちに、ぶっ殺してやるぜ」
「チッ」
回復魔法が使えると言っても、シリルのそれは他の回復魔導士たちより劣っている。つまり、ラクサスの傷を治すまでには時間がかかるということだ。
「仕方ねぇ・・・俺が時間を稼いでやるか」
治療中はシリルは戦うことはできない。ラクサスも戦闘不能だし、ここは俺がやるしかないだろう。
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