2. 鎮守府に顔出してみてよ
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「嘘でしょ……提督……」
通した和室の仏壇と爺様の遺影を見て、鈴谷は絶句というか何というか……ボー然と立ち尽くしていた。
「僕は居間にいるから。好きなだけいていいよ」
「うん。ありがと……」
あのエネルギッシュな爺様とどんなつながりの知り合いなのかは分からない。でも彼女のリアクションは、決してただの知り合いなんかではなかったはずだ。僕は彼女を一人にしてあげた。爺様との別れをちゃんとさせてあげるためだ。
自分の荷物を一旦二階の自分の部屋に置き再び居間に戻った僕は、母ちゃんが準備してくれた麦茶に手を伸ばした。
「父ちゃんは?」
「父ちゃんはまだ仕事。夕方頃には帰ってくるよ」
正直なところ、僕は父ちゃんと母ちゃんに文句があった。あの鈴谷って子になんで今まで爺様にちゃんと別れを言わせてあげなかったのか? 最初は僕も爺様と知り合いっぽい女子高生なんて得体のしれない女性だと思ったけど、実際に会って話してみると、悪いことを企んでるようには見えない。
「なんで今まで上げてあげなかったの?」
「だって和之……あの子が初めてうちに来た時さ……」
――ちーっす! 提督にいつもお世話になってる鈴谷っていいまーす! 提督いるー?
「てかるーい感じで挨拶してくるから、いたずらだと思うじゃない」
あー確かに……僕に対してもそんな感じだったね。でもだからと言って話を全く聞かないのもどうかと思うけど。
「母ちゃんもね。あの子が和室に入った時の様子を見て反省してる……」
なんつーか彼女、爺様の遺影を見て凹んでたというか絶句してたよね。あの様子を見て、ホントにいたずらじゃなくて爺様を探してたんだって僕も実感出来たわけだし。ともあれ、一度父ちゃんにも説教するしかないだろう。
そんなことを考えながら麦茶を飲んで涼んでいると、和室からパタパタというスリッパの足音が聞こえてきた。あの子が出てきたのかな? 思ったより早かったな……
「ありがとー。おかげでキチンとお別れ出来たよ」
「もういいの?」
「うん! ちゃんとお線香もあげたしね!」
居間に鈴谷が入ってきた。別れ間際の彼女の様子から察するに、ひょっとしたら大泣きするんじゃないかと思って気を利かせて和室を出たんだけど、大泣きしてる様子はなかった。目も赤く腫れたりはしてないし、笑顔も曇ってなんかないようだ。僕の考えすぎだったかな?
「鈴谷ちゃんごめんねー。おばちゃんイタズラだと思っちゃって……」
「いいっていいって。知らない子がいきなりやって来たら、誰だってイタズラだと思っちゃうもんね」
彼女がカラッとした子でよかった。母ちゃんと父ちゃんの所業をいつまでも根に持つタイプだったらどうしようかと心配していたところだったんだ。
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