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忘れ形見の孫娘たち
2. 鎮守府に顔出してみてよ
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 爺様……お盛んなのは結構だけど、わきまえてくれ……年齢というものを……。

「だから、出来れば提督にお別れしたい子たちに挨拶させてあげたいんだ」
「でもなー……うーん……二百人近くうちに来るってのは……」
「さすがに全員でってわけじゃないよ? それに、まだ提督が死んだってことを受け入れられない子もいるし、多分一人二人ずつ挨拶に来る感じになると思う」

 まぁそれぐらいなら大丈夫かな?

「んー……母ちゃんはどう思う?」
「母ちゃんは別にいいよ。一人二人ぐらいなら大丈夫だと思うし」
「やった! おばさん大好き!!」

 母ちゃんの返答を聞いた鈴谷は満面の笑みでそういうと、母ちゃんの手をガッシと掴んで上下にブンブン振っていた。母ちゃん、冷や汗が隠しきれてないです。

「和之はどう思う?」
「ねーねーいいでしょー? かずゆきぃいいい。かーずーゆーきー……」
「涙目の上目遣いでほっぺた赤くしながら甘えるように言うのはやめなさい」
「いいじゃんかずゆきー。かぁあずぅうゆぅうきぃいいい」
「僕の手を取って左右にぶんぶん振るのもやめなさい」

 ちくしょう。手が柔らかくてあったかいなんて反則だ……。

「別に一人とか二人とか少ない人数で来るのは構わないから。だから順番に挨拶に来て」
「やった!! 和之も大好き!!」

 この子はこうやって無自覚に隠れファンを量産していくタイプだと踏んだ。正直、あの笑顔で『大好き!』はヤバかった。

「んじゃさんじゃさ。鈴谷とLINEのID交換しようよ!」
「ん? なんで?」
「だって連絡取るのに必要じゃん? 今から行くよーとか」
「あそっか。んじゃスマホ出すよ」

 僕はジーパンのポケットからスマホを取り出して鈴谷とLINEのIDを交換した。

「ぷっ……」
「ん?」
「提督が言ってたとおりだ」
「なにが?」
「りんごのマークのスマホ」
「僕はスマホはりんごでタブレットがドロイドくんなの!!」

 その後は二言三言交わした後、鈴谷は鎮守府に帰ると言い出した。そこまで送るって言ったんだけど……

――それよりもさ。和之、一回ちょっと鎮守府に顔出してみて。

 そう言って鈴谷は鼻歌交じりに帰路についていた。

 それからしばらくして父ちゃんが仕事から帰宅。父ちゃんは近所の農協で働いている。農家が多くて田んぼや畑ばかりのこの土地において、親身に話を聞いてくれる担当者として農家からの信頼も厚い……らしい。自称だからどこまで本当なのかさっぱり分からん。

「ところでさ。俺思い出したんだよ」

 晩ごはん時、件の女子高生である鈴谷を家に上げたことを報告した時の事だった。父ちゃんがぽんと手を叩き、ごはん粒を周囲に撒き散らしながらこんなことを言い出した
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