1.爺様、逝去
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「いや俺も母ちゃんもその子のしつこさにホトホト困っててな……とにかくもう一度こっちに帰ってきてくれよ。親にその力を貸してくれよー……」
そこまで言われたら一度帰るしか無いだろう。翌日課長に事情を説明して、溜まった有給を消化するという名目で一ヶ月ほど休みをもらった。今年は比較的暇で助かった……。
最寄り駅に到着し家に向かう途中、再度うちに電話をかけてみる。どうやら件の女子高生は今日も来ているみたいだ。
家の前まで来た。……確かにいる。うちの玄関の前に、水色なんてとんでもない髪の色をした、みるからに人生をなめてるとしか思えない感じの女子高生が。
「ぇえ〜!! いいじゃん別にスズヤ毎日来てるんだから一回ぐらい提督に会わせてくれてもさー!!」
自分の家のはずなのに、女子高生が一人いるだけで途端に異空間に感じてしまい、それ以上近づくのをためらってしまう……だがそうも言ってられない。意を決し一歩一歩玄関に近づいていく僕に、その女子高生が気付いた。
「あ、ちーっす!!」
そう言って左手で軽い敬礼をしつつ、やや前かがみになって満面の笑顔を僕に向ける女子高生。うーん……ザ・女子高生……。
「えーと……うちに何か用?」
「え! きみ、この家の人?」
「そうだよ」
「じゃあさじゃあさ! 提督に会わせてよ!」
提督? 提督ってなんだ?
「えーと……テイトク?」
「そ! 今まで毎日鎮守府に来てたのに急に来なくなっちゃってもう一ヶ月経つからさ。提督の様子を見に来たんだよね〜。でも会わせてくれなくてさー」
「んーと……その、きみが会いたい人の名前は分かる?」
「えーとね……ちょっと待ってねー……メモったの見るから……」
そう言いながら、自身の肩からぶら下げてるバッグを開いて中を弄ってるこの女子高生。しばらくバッグの中をごそごそと探った後、一枚のメモを取り出してそれを胸を張りながら読み上げたその女子高生は、鼻の穴がちょっとだけふんすと広がっていた。
「えーと……斎藤……ねーねーこれ何て読むんだっけ?」
と思ったら自分のメモが読めなかったのか、僕の隣に来てそのメモを見せてきた。馴れ馴れしいのかパーソナルスペースが狭いのか理由はよく分からないが、僕との距離がえらく近い……
「……?!!」
「ねーねー。なんて読むの? スズヤ漢字苦手でよくわかんないんですけど」
「斎藤……彦左衛門……」
「あーそうそうひこざえもん! ひこざえもん提督に会わせてよ!!」
季節は初夏。日差しが次第に強まって、冷えた麦茶とスイカとそうめんを美味しく感じ始める季節。扇風機の前で『あ゛〜〜〜〜』と声を出して宇宙人の真似をしたくなり、そろそろセミという危険生物の影に怯え始めなければならない悲喜こもごも
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