1.爺様、逝去
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「んじゃ中身全部消して再セットアップしちゃおうか」
「再セットアップって?」
「一旦パソコンの中を綺麗にしちゃって、買ってきたときの状態にすること」
「んじゃお願い」
「あいよん」
まぁ初七日の間は仕事も休みにしたし、ろうそくの番をしながら暇つぶしがてら再セットアップするのも悪くないだろう。
そんなわけで初七日の間に爺様のパソコンの中身を精査し、一通りバックアップは取っておいて自宅サーバーに保存した後、爺様のパソコンを再セットアップした。汚れ以外は買ってきたままの状態に戻った爺様のパソコンは、今後母ちゃんのパソコンとしての新しい人生を歩むことになるだろう。これからは艦これじゃなくてクックパッドのレシピをディスプレイに表示する日々が始まるのかと思うと胸が熱い。
そして初七日も過ぎ……職場に復帰して……日々の忙しさで少しずつ爺様逝去の悲しみが薄らいできた頃の、ある日の夜のことだった。僕のスマホに父ちゃんからの着信が入った。
「もしもし? 父ちゃんどうした?」
「おう。ちょっとお前に聞きたいことがあってな」
電話の向こうの父ちゃんはかなり真剣な声をしていた。
「何かあった?」
「ああ。お前さ。爺様から女子高生の知り合いがいるとか、そういうことって聞いたことあるか?」
爺様に? 女子高生の? なんだその財産目当ての匂いがぷんぷんする組み合わせは……
「いや? 聞いたこと無いけど?」
「だよなぁ……」
「どうかした?」
「いや一昨日ぐらいからな。うちに女子高生ぽい感じのスズヤって子が来るんだよ」
「ほーん……」
「んで、お前なら何か知ってるかと思ってな。それともお前の知り合いか?」
僕に女子高生の知り合いなんているわけないだろう。第一僕は実家を離れてるし、そっちの高校生と知り合う機会なんてあるわけがない。
「つーか父ちゃんの知り合いなんじゃないの?」
「知らぬわたわけがッ!」
「援助は犯罪だよ?」
「違うと言っているッ!! 大体俺の好みは黒髪で清楚でしっとりと落ち着いた大人の……」
「まぁそれは置いておいて……母ちゃんは?」
「あいつも知らないって言ってるな」
「ほーん……」
僕は当然女子高生の知り合いなんていないし、父ちゃんも知らなくて母ちゃんも知らないとなれば……当然、犯人は爺様ってことになるわなぁ……まさかあの歳で女子高生の知り合いを作るとは……
「ともあれ一度帰ってこれないか? 『来なくていい』って言ってるのに毎日来るんだよ。『提督に会わせてくれ』とかなんとか言ってさ。得体がしれないから昨日は追い払っちゃったんだけど」
「それは別にいいけど……仏壇に手を合わせるぐらいやらせてあげてもいいじゃん。つーか僕が帰っても何も力になれないよ?」
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