暁 〜小説投稿サイト〜
忘れ形見の孫娘たち
1.爺様、逝去
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っててくれよ……』

 つい先日も父からそう相談されたばかりで、爺様の死はまだまだ遠いと思ってた。きっと僕が30歳になっても40歳になっても、今のままのはちきれんばかりのエネルギーを体中にみなぎらせて生き続けるものだとばかり思っていたのだが……やはり爺様も寄る年波には勝てなかったらしい。家に一度戻って荷物を準備してあと、新幹線で実家に戻る。

 実家は僕が今住んでいる場所から2時間ほど新幹線で移動し、1時間ほどローカル線に乗ったところにある、かなりのド田舎だ。街そのものはそこそこ発展してるんだけど、家がある場所が田んぼと畑しかなく、隣の家まで歩いて10分ほどかかる。うちの近所の川は今ぐらいの季節になるとホタルを見ることが出来るほどのど田舎。街は観光スポットとして売り出したいらしいが、いまいち効果がないのが実情だ。

「ただいま!! 爺様、和之だよ! 和之帰ってきたよ!!!」

 実家について開口一番、ぼくは爺様を呼んだ。

――帰ってきたか和之!! 今回こそ嫁を連れてきたんだろうなぁ?!!
  はやくひ孫の顔を見せろ!!

 という爺様の怒号を期待したのだが……そのセリフを聞くことはもう、叶うことはなかった。

「和之……」
「父ちゃん! 爺様は?」
「和室にいるから。挨拶してこい」
「……ウソだろ? なあ母ちゃん?」
「ウソじゃないよ。……ほら。早く挨拶して来なさい」
「……!!」

 父ちゃんと母ちゃんにそう言われ、半信半疑で家の奥にある和室に入る。爺様は……布団に寝かされていた。

「爺様……起きてくれよ爺様……ちくしょ……じいさ」

 僕は泣きながら爺様の顔にかかった白い布をめくって顔を見た。穏やかでちょっと微笑んでいるようにも見える、安らいだ表情をしていた。その顔は、すでに先に旅立っている婆様に会うのを楽しみにしているかのような、そんな笑顔だった。

「そんな顔されちゃ何も言えなくなるじゃん……爺様、お疲れ様でした」

 人が亡くなった時……お通夜から告別式、そして火葬までの時間はとても短い。後に残された人をわざと忙しくすることで、悲しみに押し潰されることなく心に踏ん切りをつけさせる意味もあるのだと聞いたことがある。

 爺様のお通夜から告別式、火葬までの一連の流れも例外なく忙しかった。僕と父ちゃんと母ちゃんは爺様の事後処理に追われ忙しく動きまわり……爺様の死を悲しむ暇もなく火葬までをやり終えていった。

「そういえばさ。爺様のパソコンどうする?」

 火葬も終わり納骨まで済ませ、爺様をキチンと弔った疲れで実家でぐったりとしている時、父ちゃんが唐突にそんなことをつぶやいた。

「どうするって?」
「いや、爺様がパソコンのゲームにはまってたのは知ってるだろ?」
「うん」

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