第58話 開戦 上野戦争
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現在、東京国立博物館あたりで、新政府軍と旧幕府軍の残党が激突した。
かくいう上野戦争である。
新政府軍を率いているのは長州藩の大村益次郎。
天候は物凄い雨の中戦闘は繰り広げられたという。
新政府軍は新型の砲弾を浴びかけ、新式の銃で、押しかける旧幕府軍の残党を打倒した。
「どうかな?わが軍の威力は?君の働く余地はないと思うが?」
皮肉たっぷりな笑みを浮かべ大村益次郎が戦況を見つめる一人の大男に言った。が、その男はなんの反応を見せず真正面を見つめていた。
大村はその様子を見つめて軽く舌打ちをした。
(なぜ、西郷はこの男をこの戦争に参加させたのだろう?)
大村は自分が西郷には信用されていないのかと思うと腹立たしかった。
この戦争が起こる前に西郷に奇妙で信じがたい人物と引合された。
それは、土佐藩・武市半平太ともう一人は一見女かと思うほど美しくも異様な雰囲気を持った青年だった。
大村は武市を紹介されたときは腰が抜けそうになった。何故なら、武市は党の昔に死んでいるのを知っていたからだ。それなのに、目の前に死んだはずの男が新政府軍の軍服を羽織り、にやりと不気味な笑みを浮かべ対峙していたのだか、豪傑な大村でさえ恐れおののいた。まして、大村は元長州藩の医師だった男でもある。
死んだ人間が生き返ってこの世に蘇ることなど信じられないことだった。それに生きていればすでに初老になっているはずなのに、なんと若々しいことか。
大村は武市にようようならざる雰囲気を感じていた。
「大村殿、貴殿には必要はないとは思うが、この男を連れて行ってもらえないだろうか?」
武市はにやりと微笑んで、その大男を紹介したのだった。
「この男の所状は?」
大村は訝しげに武市に問いただした。
「この男、元新撰組の者でござる。故あって、我らの仲間となったのです」
「ほぅ、新撰組とはな。裏切られて後ろからばっさりなんてことはありますまいな?」
大村は鼻で笑い皮肉ってみせた。
「それはご心配ご無用。この男、己の誠を通しただけなのです」
武市の笑みをみれば見るほど背筋が寒くなるのを大村は感じた。
(己の誠だと?よく言う)
編み傘で顔を隠している大男を大村は訝しげに見つめた。
上野の山は、旧幕府軍の死骸で埋まった。圧倒的な戦力差は、埋まることなく旧幕府軍の兵士達に降り注ぎ、成すすべもなく倒れていった。
「この分だと、今日中に片付きそうだな」
大村はにやりと笑った。が、大男は大村の言葉を気にすることなく、歩き出した。
「おい、どこにいかれるのか?」
大村は大男に声をかけた。が、振り向きもしない。
(はぁ、勝手にしろ)
大村は大男に睨みつけたが、そのとき、大男は新撰組の法被を取り出し、袖を通した。
「お、おい、そ
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