第179話 徐元直 後編
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、善く南陽郡を統治されていると聞き及んでおります」
徐庶の話は美羽の貧困対策について触れたものだった。
美羽は貧者救済のために公共事業を行った。領民に課す税金を下げ、代わりに灌漑工事や徴兵の賦役を増やした。ただし、賦役を免除ができる抜け道を用意した。それは賦役免除税を現金納・物納を行うことだった。この税金の額は減らした税金の額と同じだった。南陽郡は比較的に豊かな土地柄ということもあり、賦役の免除を得るためにこの税金を収める者達が多かった。結果、南陽郡の税収はあまり変わらず、その資金を公共事業に回し貧民への生活救済や仕事を与えることができた。賦役免除の税金を払った領民達は貧民達が自分達の代わりに賦役を行っていると思い、美羽が貧民を贔屓している思わず不満は出ることはなかった。貧民達には安いながら給金は支払われた。それは賦役免除を得なかった領民達も同じだった。
「単福、そなたはどう感じた。妾は世間に出回る風評ではなく、そなたの意見を聞きたい」
美羽は真摯な顔で単福のことを見た。
「袁太守は本当に貧しい者達を救いたいとお考えなのだと思いました」
徐庶はしみじみとした声で美羽に答えた。
「昔、妾は兄様に連れられ都の貧民窟に足を運んだことがある」
美羽は昔を回想しているのか遠い目になった。
「酷い場所だった。そこに住む者達の目は荒んでいた。当時は何も分からず連れて行かれ、ただ恐ろしい雰囲気に怖気が走った。兄様は妾に『大きくなったら弱い者達の力になってほしい』と言っていた。当時は兄様が喜んでくれると思い、それに応えたいと返事をした。だが、政に携わり人を救うことの難しさを知った。人には救いは必要だ。だが、過剰な救いは本人を駄目にさせ、周囲の不満を作る結果になってしまう。一番良いのは自らの足で立つお膳立てをしてやることだ」
美羽は言葉を切ると徐庶を見た。徐庶は平伏したままだったが正宗と相対している時より肩の力が抜けているようだった。正宗は美羽の飾らない気持ちを聞き驚きと同時に、その成長を喜んでいるようだった。美羽は自ら悩み考え自分なりの答えを探しだしたのだ。
「単福、そなたは自ら歩んだ道に迷いを感じたことはあるか?」
徐庶は美羽の返答しようとしなかった。だが美羽は徐庶が話し出すのを待っていた。
「分かりません」
徐庶は短く答えた。しかし、美羽は黙って徐庶を見ていた。
「私は友人の復讐のために人を殺しました。私は自分の行為を恥じたことはありません。ですが、私は結果として故郷を捨て、母を捨て、全てを捨て脱げることしか出来ませんでした。その後、私は学問の道に進みました。自らの罪を忘れるためか。私は一心不乱に学問に打ち込みました。時間が過ぎるにつれ、私は自分が正しかったのか悩むことが
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