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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第179話 徐元直 後編
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 正宗を見上げる徐庶の表情は神妙だった。美羽も正宗の側から徐庶のことを見ていた。

「単福」
「はっ!」

 正宗が徐庶の名を口にすると徐庶は少し頭を下げ力の籠もった声で返事した。
 史実では徐庶は単福という偽名は使用していない。徐庶は元々徐福とという名だった。後年書かれた三国志演義の作者・羅貫中が史書に「単家=底辺」出身とあるのを徐庶が単福と名乗り逃亡したと勘違いしたため単福という名が流布する切欠となった。だが、この世界では徐庶は単福を偽名として使用しているようだ。
 正宗は感慨深く徐庶のことを見ていた。徐庶は彼に凝視され少し緊張しだしていた。師匠である鏡翠から正宗が徐庶の事情を全て知った上で水鏡学院の運営責任者の後任と認め、その上に正宗は自分の親類である美羽の相談役を任せたいと申し出てきたのだ。あまりの好条件に徐庶は裏があると思ったかもしれない。だが、師匠の立っての頼みを無碍にもできず、彼女の生来の義侠に厚い性格もあり唯々諾々と襄陽城まで来てしまった。徐庶は正宗を窺うような様子だった。

「兄様、単福が戸惑っているではありませんか?」

 美羽は正宗のことを困った人を見るような顔で声をかけた。

「単福、済まなかった。お前の堂々とした面構えに感じ入っていただけだ」

 正宗は場の空気を和ませようと明るく徐庶に声をかけた。徐庶は自分を気遣う素振りをする正宗に戸惑っているようだった。彼にとって役人の親玉とも言える正宗像は傲岸不遜を絵に描いたような人物と思っていたのかもしれない。それは美羽に対する印象も同様のことだったように思う。弟子である徐庶の反応を鏡翠(司馬徽)を目に笑みを表し面白そうに見ていた。

「恐縮です」

 徐庶は正宗に短くしっかりした声で返事した。徐庶が返事を終えた頃、慌てた様子で朱里が謁見の間に入ってきた。

「はわわ、正宗様、私も単福の同輩としてここに参加させてください!」

 朱里は動悸を整えつつ佇まいを整え正宗に拱手し願い出た。徐庶は突然の乱入者に驚くが、その者が朱里と知ると余計に驚いた顔に変わっていた。

「朱里っ!?」
籐里(とうり)、久し振りです。車騎将軍は私のご主君。安心してね」

 朱里は息を乱しながらも徐庶に笑顔で答えた。鏡翠は朱里の乱入を口元に手を宛て可笑しそうに見ていた。朱里と徐庶の掛け合いから少なくとも真名を交わすほど仲の良い学友であることがわかる。朱里は心細い気持ちでいる徐庶の側に居たいと思い立ちここに来たのだろう。

「朱里、旧交を温めるのも構わないがそのくらいにしておけ。大した用事ではないが朱里が同席したいならするといい」

 正宗は快く朱里の同席を許した。徐庶は朱里との遣り取りを黙って見ていた。

「正宗様、申し訳ございませんでした。同席のお
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