10話
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語気が強まる。
「うん? ちーちゃんまさか気づいていないの?」
「……」
千冬は無言で先を促す。その言葉の真意を。
同時に千冬は無言で警告する。自分の生徒になにかする気があるなら何が何でも止めてみせると。
「あれは形は違えど、私たちと同種の存在だよ。間違いなくね。それも非情な存在」
楽しげな口調で語る束の言葉は千冬の心に入ってくる。同時に混乱する。
「非情な存在、だと?」
「私がISを生み出した頭脳の天才でちーちゃんがIS、身体能力の天才だとするなら、あれは戦いの天才だね。多分、本人も自覚していないと思う。その能力を持て余しているみたいだし。もしあれが自覚したら手の付けられない戦いの権化が生まれるよ。多分、私とちーちゃんでも止められない」
ISを生み出し今の世界に変革を促した存在。篠ノ之 束。
そのISを用いて世界王者に君臨した存在。織斑 千冬。
篠ノ之 束曰く、戦いの天才。s-Sports世界王者にして2人目の男性操縦者である存在。月夜 鬼一。
「戦いの天才、言葉の聞こえはいいだろうけど、言い方を変えれば人を殺す才能に富んでいるという証でもあるんだよ」
形としては歪んでいるが、今の女尊男卑は表向きには平和を維持している。平和の時代であるならば決して表に出ることのない才能。それが人殺しの才能。束は月夜 鬼一の本質を見抜いていた。
彼女は言う。
勝負をどこまでも重いものとして、尊いものとして扱う姿も。
勝つために最短で人を傷つけ、壊そうとする姿も。
自分のことなど顧みず、ただ勝つことだけに特化されたその姿も。
全部、その本質から生み出された歪んだ副産物でしかないと。
その言葉に千冬は信じ難い気持ちに囚われる。先ほどの試合でもかなり常軌を逸していたが、まだその先の領域があることに。本人が自覚していないだけで、そんな危うい世界があることを信じられない。
「どこまでも勝利にこだわる、どこまでも自分の身を差し出せるということがその証拠だよ。普通の人間があんな風に自分や他人を無機質なものとして捉えられるわけがない。他人を切り捨てることが出来ても自分を切り捨てられることはできないよ。かならず計算、そろばんが頭にちらつくからね」
その言葉に千冬は先ほどの試合を思い出す。そして同時に楯無からの報告もあった。その報告で千冬と真耶は信じ難い気持ちになった。形振り構わず、自分の身すら犠牲にしてでも勝利を求める鬼がいることに。同時に、そんな存在がいるはずがないと、いてはならないと思った。
「で、ちーちゃんのさっきの質問に答えるけどさ。あれは望む望まずに関わらず、間違いなく戦いを引き寄せるものだよ。そして沢山のものを傷つけ、壊
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