10話
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して、無に帰す存在だね。断言してもいいよちーちゃん。あれはIS学園という檻なんてあってないようなものさ。自覚すれば私たち同様、誰にも届かない領域に踏み込むよ」
「戦いを……引き寄せるもの……」
「きーくん自身、自分がどれだけ危険な存在であることに気付けない。ううん、気づくことができない」
全部、鬼一にとっては記憶のないものだから。鬼一からすれば後に映像か何かで見せられても精々、その時の自分はそれが最善であると選択したことしか理解できない。
「でさ、ちーちゃん。きーくんを私にくれないかなぁ?」
無邪気な声で悪魔は囁く。その存在を自分に寄越せと。自分ならあらゆる方法を用いてその才能を引き出すことが出来ると。
「……!?」
ここまでで充分に驚かされたが、電話の主はこれ以上何を言い出すのか。
「束さんならその才能を十全に引き出して使いこなすことができるよ。それにそんな才能を埋もれさせることなんて、こんな馬鹿な世界にはもったいないよ」
「……いい加減にしろ束。月夜を渡せるわけがないし、そんなことに使わせるつもりもない。本人もそれを望まないだろう」
束を諌めるように止める千冬。
「それはどうかなぁちーちゃん?」
千冬の言葉を束は柔らかく否定する。そんなことがあるはずないと、確信しているからこそ語りかける。だが、千冬にはそんな言葉さえも苛立ちを加速させる要因でしかない。
「なんだと……」
「本質的には私たちと変わらない存在なんだよ? 力を行使したいに決まってるじゃん。きーくんだってその力を自覚して、存分に振るえる場があれば幸せになるかもしれないよ?」
―――最終的に、その世界には何も残っていないかもしれないけど、ね。
最後に呟いたその言葉に限界に達したのか、千冬はもう聞く言葉は無いと言わんばかりに通話終了ボタンを押す。
束もその行動を予想していたのか、無機質な機械音が耳に届いても特に気にした風もない。
「名は体を表す、というけどそういう意味ではあれは間違いなく表しているよちーちゃん」
新たなおもちゃを買ってもらった子供のような無邪気な声でそれを呟く。
「―――鬼、ってね」
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