10話
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IS学園に存在する治療用の病室で鬼一は静かに目を覚ます。
「……うっ、ぐぅ……」
目を覚ました鬼一は全身を蝕むそれに、思わず苦痛に満ちた声を漏らした。全身が焼けるような熱さと、身体の内側から針で突き刺されるような痛みが断続的に襲いかかる。加えて頭蓋に亀裂が入るかと思うような鋭い痛み。様々な痛みに意識が強引に現実を呼び覚ます。
―――何を、していたんだ。僕は……?
セシリアの時と同様に鬼一は自分が何をしてこうなったのか思い出すことは出来ない。セシリア戦を超える疲労感と初めて味わう身体の激痛に混乱する。
鬼一の右手には小さな注射針が刺さっており針にはチューブが繋がれていて、そのチューブの先には薬液が入ったパックが吊るされていた。その点滴が鬼一の身体の状態の一端を示していた。
身体をベッドから起こそうしたがそれは叶わず、限界を超えた酷使に身体はほとんど動かすことが出来ない。『人格』が変わったことによる負担が頭痛を生み出していた。だが、鬼一はそれを知らない。
セシリア戦で見せた勝負の場、e-Sportsを何よりも重んじ、その上で勝利を握るために情報を集め、戦略、対策を生み出す『表』の鬼一。プロゲーマーとしての顔。
一夏戦の序盤中盤で見せた、勝つためには傷つけることを躊躇わず実行し、容赦なく対戦相手を潰そうとする鬼一。冷酷で無慈悲、人として歪んでしまった顔。
そして終盤で見せたのは月夜 鬼一の持つ全てのポテンシャルを発揮した、勝敗にどこまでも真摯に、どこまでも勝利を渇望し、どんな格上であろうとも死に物狂いで掴み取る、言わば鬼一の本質の一端を表している顔。
月夜 鬼一には複数の人格が存在する、3つの存在を知っている人間からはそう評されている。だが、あくまでもそれはプレイスタイルがまったく違うものに変貌する様から、そう言われていたのだが。しかし、鬼一はそれを自覚できない。戦いの中身を思い出すこともできないし、後に試合の内容を動画などで見たとしても、それが当時の自分が導き出した最善なんだと信じることしかできないからだ。
悲鳴を上げる身体の痛みを無視して、鬼一は再度身体を起こそうとしたがやはり出来なかった。
しかし、身体を起こそうとする鬼一の背中を支えて手助けをする人間がいた。
「鬼一さん、ご無理をされてはいけません」
労わるように、慰めるように、慈愛に満ちた声色と優しい手つきで、控えていたセシリアは鬼一を支える。身体を起こした鬼一は、底に溜まっている熱を吐き出すように深呼吸を繰り返す。
「……セ、シリア、さん……?」
意識がハッキリとしていないのか、熱に浮かされたような声で鬼一は問いかける。視界が明るくなっておらず、誰がいるのか分かっていないみた
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