忘れんなよ
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痛に顔を歪ませろよ!!」
次から次へと繰り出されるシリルの拳。彼は相手の顎を打ち抜くと、悪魔はゆっくりと後ろに倒れていく。
(もう・・・無理だ・・・)
自らの実験道具にしたことで、逆に力を高める結果となった少年。彼に抗う術のないノーランは、死を覚悟し、殺意ある目を向けるシリルを見据えている。
「これで終わりだ」
渦のように右腕に水と風を纏わせていくシリル。魔力を溜め終えた彼は、大きくその腕を後ろに引いた。
「滅竜奥義!!」
少年が持っている最強にして最高の必殺技。彼は大切な恋人とその相棒が命を捨てる原因を作った男に、それを突き刺そうとした。
「水中海嵐舞!!」
悪魔の心の臓へと一直線に放たれたシリルの魔法。それがノーランを捉える刹那、間に割って入った青年の体に、それが突き刺さった。
ブシャッ
辺りに飛び散った血液。それは彼に守られた悪魔にも、それにトドメを刺そうとした少年にも降りかかった。
「え?ラクサスさん・・・なんで・・・」
先程から自分に向かって幾度となく攻撃を仕掛けてきた雷竜。そんな彼が、今度は敵である男を庇うように自分の魔法を受け止めたため、シリルは困惑していた。
動揺し、次々と攻撃を繰り出していた少年の手が止まる。それを見て、ラクサスは彼をそっと抱き締めた。
「バカヤロウ・・・そんなことしたら・・・ウェンディが悲しむだろうが・・・」
「え?」
口元から血を流すラクサス。彼の白くなりつつある顔をシリルは見上げる。
「忘れんなよ・・・お前は・・・一人じゃな――――」
そう言うと、ラクサスはその場に崩れ落ちる。
「ラクサスさん・・・?」
地面に伏せた仲間を見て、ことの重大さにようやく気付いたシリル。悪魔の模様に取り込まれつつあった彼は、わずかに残っていた善の心が強く現れ、目からボロボロと涙を溢す。
「ラクサスさ〜ん!!」
その場にしゃがみこみ、雷の竜に手を伸ばすシリル。森に幼き竜の悲鳴にも似た叫びが響き渡った。
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