第19話『会得』
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「で、どこに行くつもりなの?」
俺は本題を訊く。
昨日彼女は「どこかへ行く」と言った。その“どこか”が気になるのだ。こんな森の中に何かあるのだろうか。
「それは後々話します。とりあえず、目的地までのお散歩に付き合って欲しいかなって」
「それは全然いいけど…」
どこに行くのかわからないことに不安はあるけど、戸部さんが変な所に連れていくはずはないだろう。
「そういえば、戸部さんはどうしてここに?」
「温泉旅行です。私の両親は旅行が好きなので、近い所ならいつも付き合わされるんですよ」
彼女は苦笑いしながら説明して、やれやれと肩を竦めた。連れ回されるのは、さぞかし大変だろう。
逆に、俺の親は自分たちだけでどこか行ってしまう。やっぱり家庭って違うものなんだな。
「それじゃあ行きますか」
「うん」
その後、俺と戸部さんは宿から離れて適当に散歩しながら会話していた。初めはまだ緊張していたが、次第に気軽に話せるようになった。
山の中ということもあって、溢れる自然に囲まれて話題が尽きなかったのが幸運だったのかもしれない。
「うーん、風が気持ちいいー!」
「山の空気は新鮮ですからね」
二人で感想を言う。山って意外と悪くない場所だな。田舎ってこんな感じなのかな。田や畑が一面に広がり、川や森が近くにあって・・・やべぇ、ちょっと憧れるかも。
「学校の合宿もこんな所が良いんですけどね」
「そうだね・・・あ、そういえば、前に話した時から何か変わった? その、友達とか…」
「学校」と聞き、俺はある事を思い出し質問してみる。
それは彼女の悩みであった『友達』についてだ。
以前に俺と莉奈が彼女と話した時、彼女はそれについて悩んでいたのだ。そしてそこで俺が全力でアドバイスを送った。
だから、そこからの学校生活の様子を俺は聞きたかった。隣のクラスとは言えど、廊下ですれ違う時に挨拶するくらいで、話す機会は特になかったからだ。
「はい。無事にクラスの皆とは仲良くなれましたし、学級委員になりました。あの時、三浦君にアドバイスを貰ったおかげです。ありがとうございました」
「いやいや、そんな気にしないで!」
俺は何だか恥ずかしくなって顔をそらす。感謝されるほどのことをしたつもりはないのだから。
ただ、心の中では安堵していた。
俺の言葉が人を良い方向へ進めた、と思うととても気分が良い。
そうか、学級委員か…。
俺みたいにクジじゃなくて、きっと皆からの信頼があったからだろうな…。
とにかく、馴染んだなら良かった良かった。
「あの、森の中とか行ってみませんか?」
不意に言って
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