第19話『会得』
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「部長、だったらもう一度やるので見ててもらえません?」
「よし。良いぞ!」
部長は快く引き受けてくれた。
*
場所が変わって、昨日の部長らの戦闘場所。
この辺で開けた場所といえばここしかない。
早速俺はその場所のほぼ中央に立った。
「いきますよ?」
「おう!」
俺は集中する。
一度発動させたということは、もう魔術を使える身体になったということだろう。であれば、2回目だって発動できるはず。
あの時の情景、心情、全てを思い出し、先程の様に右手を思い切り伸ばして・・・!!
「はぁっ!!」
・・・・・
静寂が訪れた。
風が起こるどころか、元々から吹く気配さえない。
「え、部長、これって・・・?」
俺は困惑の表情で部長に訊く。
すると部長は迷わず口を開いた。
「未完成だな」
あっさりと言われた。いや、言われずともわかっていた。
しかし、俺にはなぜ発動しなかったのかはわからなかった。
「落ち込む必要はない。お前は俺よりも圧倒的に早く覚えたんだ。それは誇っていい」
頷く部長のその言葉を聞いて、俺は考え直した。
そうだよ。暁君よりも、部長よりも早く会得ができたんだ。これ自体が嬉しいことじゃないか。使えるのは、また後で良い。
「惜しかったな。三浦」
「はは、せっかく暁君に勝ったと思ったのに・・・」
「そんなこと考えてたのか」
「まぁね」
すると暁君は少し口角を上げ、苦笑いを見せた。
「俺だって会得したらお前に負けねぇよ」
「じゃあ会得したら、部長達みたいに戦闘できるのかな?」
「──もちろんだ」
俺が暁君にそう訊いていると、部長が答えた。そしてニッと、眩しいスマイルを浮かべる。
そうか、いつかできるのか・・・!! 楽しみだ!!
*
昼食を摂り終えた俺は、宿の玄関に居た。
今日の部活は運良く午前中で終わり、午後は自由時間となったのでどうにか戸部さんとの約束は守れそうだ。
にしても、どこで待てばいいのだろうか? そう思って、今ここで待っているのだが…。
「あ、三浦君!」
廊下の奥から戸部さんの声がした。どうやら正解だったようだ。俺は声のした方を見る。
「今日、大丈夫だったんですね」
「うん」
少し大きめな手提げ鞄を持つ戸部さんが、そこには居た。私服姿がとても可愛らしい。
そして最初に会った時とは比にならないほど、馴れ馴れしく会話ができた。俺にそんなことができるのも、戸部さんが馴染みやすい人だからこそだろう。
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