外伝 あいつはそういう奴だから
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に剣が突き刺さる。既にミノタウロスは口から血泡を吹きながら這って逃げようとしていた。立ち上がるための足の一本は、既に斬り飛ばされて失われている。
本来なら魔石の再生力によって復活する筈の欠損ダメージ修復は遅遅として進まない。それが胸に深く突き刺された剣が魔石を傷付けた結果だとは気付いていない。そして、仮にそれに気付いて引き抜けたところで――白狼はそれを許しはしない。
弱弱しい悲鳴を上げてその場から離れようとするミノタウロスの上に、小柄な少年の影が落ちた。
「生まれ出でたその時から、貴様は逃げることを許されん。泣こうが喚こうが、誰に助けを求めようが――手遅れなんだよ」
少年の小さな掌がゆっくりと翳され、それは欠けた何かを求めるようにゆっくりと、ミノタウロスの口へぴったり当てられた。
「――ファイアボルト」
瞬間、ミノタウロスの口から体内へ雷のような速度で灼熱が注ぎ込まれ、爆ぜた。
「ヴガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?ヴヴアッ、ガ、ゲアアアアアアアアアッ!?」
身体の内から荼毘に付される地獄のような責め苦。眼球の奥から血液が沸騰し、空気を取り込むための肺細胞が塞がれ、胃袋の胃液が蒸発し、生きながらにして生体機関がぐずぐずに焼け爛れていく。
いっそ早く、死を迎えたい。そんな願いを叶えるように、白髪の少年は畳み掛ける。
「――ファイアボルト」
「ヴァアアアアアアアアアアアアアッ!!!アアエ、アアアア――」
「――ファイアボルト」
「アアア――ア――――、――――」
眼球、鼻、傷、腹に突き刺さった剣の根元から赤黒い煙と飛沫が噴出し、ミノタウロスは動かなくなった。
「ファイア………なんだ、もうくたばったか」
少年はそれを最後に、ミノタウロスウへの興味を失ったようにミノタウロスの腹に突き刺さった剣を引き抜いた。炭化した腹からボロリと魔石が零れ落ちたのを無視し、目の前で唖然とするアイズを無視し、その少年――ベル・クラネルは何事もなかったのように歩みを進めた。
「………ベル君っ!今日の儲けは!?」
「ない」
「なっ…………ま、また魔石を持って帰らずに敵だけ殺して来たのかい!?」
「金に興味はない。それに、うちは商業ファミリアに転換しただろう」
「そ、そりゃそうだけど……今のウチの経営は結構赤字ギリギリなんだよ!?」
「知るか。大体、派手に動きすぎると魔石の大きさからレベルを3つサバ読んでいることがバレるだろう。隠せと言い出したのはそちらで、俺はそれに応じた。今更文句を言うな」
「うううう……ウチの子はどうしてこんなに悪い子になっちゃったんだ!」
「生まれつきだ。気にするな」
性悪説を地で行く健康優良不良少年は、今日もダンジョンで火だるまを量産す
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