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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 あいつはそういう奴だから
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て彼女は主神の好意と命の要望でタケミカヅチ・ファミリアに入団することになる。

 そして数日後、命は春姫の口から、彼女を身請けした人物の正体を知ることとなった。

「………はぁぁぁぁぁぁッ!?『狂闘士』に嫌がらせで身請けされたぁッ!?」
「今になって思えば嫌がらせとしか思えないんだアレはっ!!」

 なんでもイシュタルは大分前からオーネストと交友があるらしく、ごくたまに歓楽街に訪れていたらしい。7年前にイシュタル・ファミリアの元団長と「何か」があり、それ以来現役を退いた元団長の様子を時折聞きに来るという話だった。
 元団長は、とても優しい人らしい。何でも失明していて目が見えないらしいが、失明の原因にオーネストと関係があるかどうかについては誰もが口を閉ざしている。それが一種の答えと言えるだろう。

 そんな折、偶然にも春姫はオーネストと出会った。出会ったその時は相手が特別な存在とは思わなかったし、この頃の春姫はすっかり外に出る事を諦めかけていた。だから、本当に漠然と「この人が助けだしてくれればいいのにな」とありもしない幻想を胸の片隅に抱きながらも、何も言わなかった。

 すると、まだ何も話さないうちにオーネストが口を開いた。

『………お前、気に入らないな』
『……は?』
『閉塞した状況に不満を持っている癖に、自分で現状を打破しようという気概が欠片も感じられない。祈りをささげて奇跡が起きるのを待つ祈祷師と同じだ。ああなればいいのに……こうなればいいのに……そんな実現可能性の限りなく低い妄想を抱きつつも、その妄想を実現させる為の方法は考えない。できっこないと言い訳している。………そうか』

 勝手に得心したオーネストは部屋から出て行った。
 そして、イシュタルが入ってきた。

『オーネストが貴方を身請けしたわ。出てっていいわよ』
『え?』
『あ、ちなみにオーネストはもう帰ったから。貴方、自分の身は自分で何とかしなさい。オーネストは貴方の面倒見ないってー』
『え?………え!?』

 もっとロマンチックに、勇者のような人が助けてくれることを、心のどこかで願っていたのだ。
 それを見透かされ、オーネストは春姫が一番すっきりしないであろう助け方をした。
 要するに、完全にオーネストの嫌がらせである。

「だから素直に感謝したくないと?」
「………うん」
「た、確かにオーネスト殿も性悪だとは思うが、恩人は恩人でしょう?」
「………うん」
「お礼、言いに行きましょうよ」
「………あいつは絶対に顔を見るなり『助けた覚えがないからどうでもいい。邪魔だから帰れ』って言うに決まってる!あんな性悪な男に助けられたくなかったぁ〜〜〜ッ!!」

 あと何年かオーネストに見つからずに過ごしていたら望む結果は得られたか
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