最終項『宝探しー?ぉーぱるのつるぎー』
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える。
ダンっと軽く揺れを起こし床を蹴ると階段を飛び越えて襲いかかってくるのと、自分が踏み込みのは一緒だった。光を浴び七色に輝く剣と黒く染まった鉤爪が同時に振るわれる。
「ーーハァァァ!!」
『Gruaaaaa!!』
振り切った剣からは確かな手ごたえを感じ、空中ですれちがった俺らは元いた位置を入れ替え、着地した。
時が止まったかと思うほどの静寂が場を支配する。 しかし、それを破ったのは極々小さな音だった。
装飾剣〈ヴォーパルの剣〉の刀身にピシリと小さな亀裂が走り、それが全体に達するとともに耐久値が全損した剣はポリゴン片となって自分の手の中から消え去った。 まさかの事態に冷たい汗が背中を伝う。 そうして剣が砕け散った直後耳をつんざく絶叫が響いた。咄嗟に空っぽになった両手で犬耳を抑えこむ。 常人より強化された聴覚にこれは堪えた。
『Gyaaaaaaaaaaa!?』
振り向けば、身に纏った黒いオーラを霧散させたジャバウォックが喉を裂かんばかりに悲鳴をあげていた。 断末魔の悲鳴だ。 大きく後ろにのけ反った長い巨?が、不自然な角度でぴたりと静止しーー
ガラスを砕くような大音響とともに、微細なポリゴンの欠片となり爆発四散する。
ジャバウォックが居た場所に思わぬものを見つけ、駆け寄った。
「あっ……!」
戦闘開始直前にジャバウォックに呑み込まれていた子ウサギがそこに居た。 何が起きたかのかわからないと言った体で、首傾げているそいつを抱えあげて優しく撫でていると何処からともなく、白い紙片が宙を舞い、次第に量と勢いを増したそれが視界を覆う。
ひときわ強く風が吹き、視界が晴れるとそこには豪奢な部屋はなくただただ白い空間が何処までも続いていた。 突然の出来事に呆然としていると聞き慣れた声に名前を呼ばれた。
「ユーリ……?」
「ん、あぁ……シィか」
彼女も戸惑っているのか首を傾げている。 と、その時目の前にトンっと軽やかな音を立てて着地した白と黒の少女が現れた。 白の少女ありすが両腕を伸ばしてきたので、うさぎを渡してやると目を細め、愛おしそうにうさぎを撫でていた。 うさぎを愛でるありすに変わって、黒の少女アリスが微笑みながら言った。
「お兄さんたちのおかげで罪のないうさぎが死なないで済んだわ、ありがとう。それに意地悪なおば様も少しは頭を冷やしたみたい。 これで全部解決……ハッピーエンドね!!」
気がつけば、足元から黄金の粒子がひらひらと舞い上がっていた。 なんとなしにもうこの冒険は終わりなのだと悟った。ひらひらと手を振る少女たちに笑みを返し、一言添えてやる。
「楽しかったか?」
「えぇ、とっても!」
「またね、お兄さん!今度はもっと素敵な物語にご招待するわ!」
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